ウエタニミレイです。
今日は本の紹介です。
武道家でもあるアドレリアン仲間から紹介してもらった
「身体知性」佐藤友亮 著です。
いつもながらボキャ貧なのですがw、感想を一言で言うと
「めちゃ面白かった! とてもオススメです!」
特に臨床医には必読の1冊でしょう。
漢字や専門用語が多く、決して読みやすい本ではないのですが、著者がこまめに話題ごとの要約を入れており、自分は1冊の本の全体像の中のどこにいるのか、と迷子にならないように配慮されています。
逆に言うと、それぐらい内容が濃い1冊とも言えます。
著者は医師であり合気道家でもあります。
分析的医学はどんどん進歩していますが、今なお人体の仕組みや病気について分からないことが多く存在しています。
臨床現場の限られた時間の中で、分析が不可能な問題や結末が不確かな問題について医師には迅速に合理的な判断をくだすことが求められます。
臨床現場で医師が日常的に行っているような結末が不確かだが、重要な判断を合理的に行うためには人体経由の感情コントロールが大切である、という考えのもとに、この合理的判断を導くための身体の役割のことを著者は「身体知性」と名付けました。
聞き慣れない言葉だと思いますが、身体知性とは、分析が不可能な問題や、結末が不確かな未来について判断をくだすときに機能する身体の役割のことです。
医師の感情の変化が「認識エラー」をもたらし、それが誤診へとつながることは珍しくありませんが、報道で目にすることも多い医療過誤が、医療者の不注意やケアレスミスよりも、多くの場合はこの感情の変化にともなう「認識エラー」によって引き起こされているということに驚く方は多いかもしれません。
科学的分析だけでは太刀打ちできない医療現場の臨床判断を行う際に、一個人としての医師の身体性が重要になってきます。
人間が身体経由で入手する個人の経験も含む情報が感情を形成し、感情の働きによって、人間に合理的な判断を下させます。
感情をつくり出しているのは我々の身体ですから、医師の身体の状態と機能が重要なのです。
本書の中では、不確定要素の多い医療現場で短時間に合理的な臨床判断を行うために、医師の感情が穏やかに保たれていることについて繰り返し言及されています。
著者は本書に書かれている身体知性の重要性を理解するために、合気道が果たした役割が多大であったことを述べています。
最終章には著者の合気道の師匠であり、思想家の内田樹氏との対談が収録されているのですが、個人的にはこの対談が秀逸だと感じました。
ものすごく合気道が始めたくなりますw
私は大切だと感じた箇所に蛍光ペンを引きながら読むのですが、最終章は蛍光ペンだらけになってしまいました。
病院勤務医を中心に医師の長時間労働が問題視されていますが、本書を読んで、医師が自身の身体知性を整えるための時間的、生活的な余裕を持てるようになることは、患者さんの利益にもなることも確信しました。
強くオススメの1冊です。