「見ざる・聞かざる・言わざる」に隠された危険
「見ざる・聞かざる・言わざる」という言葉を聞いたことはありますか?
目を覆い、耳をふさぎ、口を閉じる“三猿”の姿は、
日本でも馴染み深いものですね。
もともとは「悪いことは見ない・聞かない・言わない」という意味で、
叡智の象徴ともされますが――
実はこの“三猿”、
自分に対してやってしまうと、命に関わる危険性があるのです。
ストレスが心と体に与える影響
私たちの体には、「ホメオスタシス(恒常性)」という機能が備わっています。
体の内部環境(体温、血圧、免疫など)を一定に保ち、健康を維持する大切な仕組みです。
このホメオスタシスは、主に以下の3つのシステムで保たれています。
- 自律神経系
- 内分泌系(ホルモン)
- 免疫系
しかし、慢性的なストレスは、これらのバランスを大きく乱してしまいます。
たとえば精神的ストレスが加わると、
大脳皮質や大脳辺縁系から視床下部に情報伝が達され、
ストレス反応系である「視床下部‐交感神経‐副腎髄質系」を活性化させます。
すると副腎髄質からはアドレナリンが分泌され、
血圧や血糖値が上がり、体は「戦闘モード」に入ります。
また、精神的ストレスは
「視床下部‐脳下垂体前葉‐副腎皮質系」も活性化させます。
すると副腎皮質からはストレスホルモン「コルチゾール」が分泌され、
免疫機能が抑制されます。
こうして、ストレスが長期間続くことで、
- 自律神経の乱れ
- ホルモンバランスの崩壊
- 免疫力の低下
といった心身の不調が引き起こされていくのです。
慢性ストレスを招く「本音の封印」
私はこれまで、産業医として1万人以上の働く人のお話を聞いてきました。
そのなかで、多くの人が共通して抱えているストレスの背景には、こんな傾向が見られます。
- 自分の感情を押し殺している
- 感じることに「良い」「悪い」とジャッジを加えてしまう
- 役割や立場で“演じて”生きている
- 本当に言いたいことを我慢している
- 「○○であるべき」という思い込みに縛られている
- 自分に価値があると思えない
要するに、本音を見ない・聞かない・言わない――
自分に対して「三猿」をしている状態なのです。
これは一見、我慢強く見えるかもしれませんが、
心と体にとっては、命の危険にもつながるもっとも大きなストレス源です。
自分の心の声に耳を傾けることから始めよう
私たちは、どんなに外側を整えても、
自分の内側を見ないままでは、真の健康とはいえません。
発明王エジソンはかつて、こんな言葉を残しています。
未来の医者は薬を用いず、人間の骨格、食事、
そして病気の原因、予防に注意を払うようになるだろう
私が日々、メルマガを書き続けているのは、
医師としての「予防活動」の一環でもあります。
自分らしく生きよう
自分の心とつながろう
本当の自分を生きよう
そのために、自分の感情や声にもっと正直でいてほしいのです。
今日も自分を大切に🍀
三猿が象徴する「見ざる・聞かざる・言わざる」。
他人に対してなら賢明な選択かもしれませんが、
自分に対してこれをしてしまうと、心も体も壊れてしまいます。
だからこそ、
- 見たくない本音に少しずつ目を向けてみる
- 聞こえないふりをしていた心の声に耳を傾ける
- ほんの一言でも、自分の思いを口にしてみる
そんな小さな一歩が、心と体を守ることにつながります。
今日も、自分を大切にできる一日になりますように🍀