【LMTレッスン開催報告】山内直人先生「記憶の科学とつらい記憶を抱える人への援助」

11月と12月の2回にわたり、敬愛する精神科医・山内直人先生をお迎えして

LMTレッスン「記憶の科学とつらい記憶を抱える人への援助」を開催しました。

11月の第1回では、

  • PTSD・複雑性PTSD
  • 愛着・発達性トラウマ障害
  • 記憶の科学
  • トラウマ治療を考える

など、基礎から臨床の最前線まで一気に俯瞰

12月の第2回では、

  • ACEs(逆境的小児期体験)とその影響
  • 虐待が脳や遺伝子にもたらす影響
  • トラウマインフォームドケア
  • 日常の臨床やカウンセリングで何ができるか、何をすべきか
  • 支援者自身のセルフケアへ

など、さらに深く、実践につながる学びが詰まった時間となりました。

印象に残った学びの一部をご紹介

今回、山内先生から学んだ内容の中で

私自身が「支援の現場でこれは本当に大事」と感じたポイントをいくつか紹介します。

トラウマは“明確な出来事”だけでは語れない

PTSDや複雑性PTSDは厳格な診断基準がありますが、

実際には 診断に当てはまらない“グレーゾーンの生きづらさ” を抱える方がとても多いのだと改めて感じました。

例えば、

  • 感情がうまくコントロールできない
  • 自己否定が強い
  • 親密な人間関係が続かない
  • 心身の調節不全がある
  • 過剰な万能感でがんばりすぎてしまう

こうした背景には、幼少期のつらい体験・傷つき体験が隠れていることがあるということを改めて学びました。

実はコレ、過去の私自身にもそのまま当てはまることなのです。

昔の私は、

とにかくがんばっていないとダメ

と、意識的にも無意識にも自分を追い立てていました。

— 家事も育児も仕事も、完璧にこなさなければいけない。

— よい母・よい妻・よい医師でいなくてはいけない。

— いつもキレイにしていないといけない。

— 仕事だけじゃなくしっかり遊ばないといけない。

— ママ友との付き合いもして、PTA会長もやらないといけない。

今振り返ると、

ひたすら万能感で自分を支えようとしていたのだと分かります。

だからこそ私は、

“トラウマと診断されていなくても、支援が必要な人は確実にいる”

という山内先生の問題意識に心から共感します。

2025年8月に刊行しました拙著『心を病む力』は、

まさにそうした方へ届くことを願って書きました。

生きづらさの背景にある「DSO症状」という視点

複雑性PTSDの核となるのが DSO(Disturbances in Self-Organization:自己組織化の障害)症状

  • 感情調節の困難
    負の感情刺激に対する過剰な反応性として、
    怒りや攻撃的行動の爆発、衝動的な行動、自傷行為などがみられる。
    また、感情的な鈍麻や解離的な状態も含まれる。
  • 否定的な自己概念
    永続的な恥、罪悪感、失敗感、無価値感、自己嫌悪など、
    自己に対する深い否定的な感覚。
    自分が根本的に他人と異なっている、
    自分には欠陥があるといった感覚を伴うこともある。
  • 対人関係の不安定さ
    他者との感情的な親密さや
    意味のある関係を形成・維持することの深刻な困難さ。
    親密さや信頼を築くことができず、
    孤立につながることもある。

これらが揃うと、たとえ“明確なトラウマ”が思い浮かばなくても、

その人は長い間、本当に大変な環境でがんばってきた可能性があります

私自身も、かつての私のしんどさが腑に落ちていきました。

記憶は“思い出すたびに書き換えられる”

今回のセミナーでとても印象的だったのが、

記憶は思い出すたびに“更新される”という脳科学の話です。

これはつまり、

  • 安心できる場で話す
  • 理解してもらえる
  • 責められない
  • 恐れが再現されない

という体験を重ねることで、

過去の記憶が「少しずつ安全側に」上書きされていくということ。

つまり、

“安全な関係性そのものが療法になる”

というシンプルで深い視点を、改めて大切にしたいと思いました。

参加者の声の一部をご紹介

PTSD、複雑性PTSD、愛着障害、発達性トラウマ障害、自己同一性の障害などの
概念の関連が、あいまいなまま混沌としていたのですが、
山内先生のご講義で整理されました

「記憶は思いだすたびに作り替えられている」
ゆえにセラピーやカウンセリングが有効なのだとあらためて気づきました。

潜在記憶に関わる扁桃体システムについて知ることができました。
恐怖の消去学習には扁桃体と内側前頭前野が関与し、
怖くない記憶を繰り返すことで扁桃体の抑制がみられたとのことから、
特にPTSDになっていない段階の方には、
怖くない記憶がアップデートできる関わりを持っていきたいと思いました

ずっと自分に感じていた「無理した万能感」の背景が理解できて
自己理解につながりました。
「なんでもできる自分でいなきゃ」の背景には安心感がなかったんですね
安心感がない中で必死に頑張ってきたんだなと思うと涙が出てきました
気づきを頂き、本当にありがとうございます。

理解を深めて一緒に考えていくこと、
関係性が助けになることなどがやはり大切なんだなと思いました。
ただ、攻撃性で表現されるなど難しいケースもあるので、
引き続き学んでいきたいです。

基本的なことを大事にすること。
具体的には、
①安心安全な空間を作ること
②評価・判断せずに人間として尊重すること
③過剰適応に気を付けること
これらを自分にも相手にも大切にしていきたいと思いました。

職場不適応を起こした方に接する機会が多いのですが、
つらい記憶を抱えて生きてきた人が、成人以降でも、
支援者の適切な関わりによって対人関係上の問題行動を改善、修正できることを、
信じ続けたい
と改めて思いました。
また、心理教育と感情コントロールの方法については、
自分でもできそうなところから、
さっそく日々のカウンセリングで実践したいと思いました。

読者の方へのメッセージ

生きづらさを抱えている方の中には、

基本的な安心感” が育まれないまま大人になった方が少なくありません。

その苦しさは、周囲からは見えません。

だからこそ、支援者は、

「もしかしたら傷ついた体験があるかもしれない」

「この人はどんな背景を抱えて生きてきたのだろうか」

「今ここで、何に怯え、何に安心するのか」

——こういった視点を持てるかどうかで、関わり方が大きく変わります。

そして、それは難しい専門知識や特別な技法ではなく、

“その人を丸ごと理解しようとする姿勢” から始まるのだと、改めて感じました。

山内先生は、科学的な視座と臨床経験の広さを行き来しながら、

ひとり一人の生きづらさに寄り添う方法を丁寧に示してくださいました。

私自身も、

セラピストとして、産業医として、

有効な支援ができるようにこれからも学びを続けます。

そして、今回のセミナーを企画して本当によかったと思っています。

お知らせ

山之内先生はマインドフルネスにも造詣が深く、

来年はインドフルネスのセミナーをしていただけることになりました!

詳細が決まり次第、メルマガでご案内しますので、

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おわりに

2回にわたるセミナーにご参加くださった皆さま、

そして、知識と経験を惜しみなく共有くださった山内先生、

本当にありがとうございました。

支援者が学び続けることは、

目の前の誰かが“ひとりで抱えなくていい未来”につながります。

これからも、支援職のみなさんと一緒に学びを深めていけたら嬉しいです🍀