2月のLMTレッスンでは
「はたらく人の糖尿病ケア」をテーマに
オンラインセミナーを開催しました。
今回は産業保健職の方を中心にご参加いただき、
病気という「事象」ではなく、
病を抱えて生きる「人」とその人の「はたらく現実」に目を向け、
どう支援するかについて一緒に考える時間となりました。
医療の知識だけでは届かないものがある
糖尿病の治療を続けながら働く人は、決して少なくありません。
一方で、当事者の多くが、
- 通院や生活管理を続けることの難しさ
- 職場で理解を得にくい現実
- 「自己管理ができていないのでは」という無言の圧力
といった、医療の知識だけでは扱いきれない困難を抱えています。
医学と心理学をつなぐ、松澤先生ならではの視点
ゲスト講師にお迎えしたのは、
私の大学時代の同級生でもある松澤陽子先生(松澤内科・糖尿病クリニック院長)。
松澤先生は臨床心理士を経て医師となった、
非常にユニークなバックグラウンドをお持ちの先生です。
今回のレクチャーでは、
- 今さら聞けない? 糖尿病の基礎知識
- イマドキ糖尿病治療「三種の神器」
- はたらく人の糖尿病をどう支えるか
- 糖尿病スティグマとコミュニケーション
といった内容を、
専門性を保ちながらも
分かりやすく解説してくださいました。
「しめじ・えのき」から最新デバイスまで
支援の現場に立つ私たちは、まず正しい医学的知識という武器を持っておく必要があります。
今回のレクチャーでは、
糖尿病の合併症を覚える語呂合わせ
「しめじ(神経・目・腎臓)」や
「えのき(壊疽・脳卒中・虚血性心疾患)」
といった基礎の復習から、
最新の治療トピックまでを網羅しました。
特に驚いたのは、
健康な20代は、
食後であっても血糖値の変動幅が驚くほど小さく、
精密な恒常性が保たれている
という、
最新のデバイス・持続血糖測定器「FreeStyleリブレ」が
可視化したリアルな血糖変動でした。
スティグマに気づくことから、支援は始まる
今回のレッスンの大きなテーマの一つが、
糖尿病にまつわるスティグマ(偏見)でした。
近年のJDS(日本糖尿病学会)2022–2023では、
治療目標の中に、
スティグマ、社会的不利益、差別の除去が明確に位置づけられたそうです。
周囲からの、
「糖尿病は生活習慣が乱れているからだ」
「自己管理ができていないせいだ」
という社会的偏見以上に、
特に深刻なのが自分自身に向けられた偏見(自己スティグマ)です。
参加者からは、
「自分にも偏見があったことに気づいた」
「個人の背景に目を向けないと、良い支援につながらないと実感した」
といった率直な声が多く寄せられました。
糖尿病を「個人の問題」として切り取るのではなく、
背景にある仕事の忙しさや経済環境、
そして社会の理解不足という「構造」として捉え直す視点こそが、
支援の第一歩になるのだということを学びました。
ケーススタディで考える「はたらく人」のリアル
後半では、
「はたらく人の糖尿病を考える~こんなときどうする?~」として、
架空の3つのケースを用いたケーススタディを行いました。
「この人が職場にいたら、どんな点に注意が必要か」
「産業保健職として、どう関わるか」
を参加者全員で考えました。
さまざまな立場からの視点が共有され、
一つの正解ではなく、
複数の支援のあり方があることを実感する時間となりました。
「変えようとしない」コーチングという姿勢
レッスンの締めくくりでの松澤先生のメッセージが深い印象に残っています。
対人支援のプロほど、
「何とかして行動変容を起こさせなければ」と肩に力が入り、
相手をコントロールしようとしてしまいがちです。
しかし、コーチングマインドを基盤とした関わりは、
その「思い」を手放すところから始まります。
「とにかく通院を続けてもらうことが何より大事」という言葉も、
強く印象に残っています。
医療と仕事のあいだを、対話でつなぐ
松澤先生によれば、
糖尿病ケアの真の目標は、血糖値を下げることそのものではなく、
「その人が、糖尿病のせいで人生を諦めなくていいようにすること」
とのことです。
今回の学びが、
日々の支援や関わりの中に広がり、
役立っていたら嬉しく思います。
松澤先生、そしてご参加くださった皆様、
本当にありがとうございました🍀
