ウエタニミレイです。
普段、産業医として仕事をしていると、たまにタイトルのような発言を聞くことがあります。
ウイルスやタバコなど、病気には病気になる原因があると考えるのが一般的でしょう。
医学書をみると、病気の説明として必ず【原因】という項目があります。
Aという原因があってBという状況になるというのは、いわゆる原因論の考え方です。
一方、アドラー心理学では原因論とは対極にある目的論という考え方を採用します。
つまり、Bという目的のためにAをつくり出す、と考えます。
身体疾患すなわち体の病気については、病気になる目的があるとは考えにくいことがほとんどです。
けれども、うつ病や適応障害、抑うつ状態などの診断名がつくようなメンタルヘルス不調の場合は、そのような不調の状態になる目的がある場合があるのです。
病気になる目的があるなんて信じられませんか?
もちろん、ご本人から話を聴いてみると、長時間残業だったり、上司からの厳しい指導だったり、意に沿わない異動というような、原因らしきものは見つかるかもしれません。
このようなケースでもよくよく話を聴いてみると、究極的にはただただ「休みたかった」という目的で、表現は悪いかもしれませんが病気が口実になっているような状況であることもあるのです。
その証拠に全例ではありませんが、医療機関を受診しても投薬を受けることなく休養だけで快復されるケースが少なからずみられます。
そして、タイトルのように「うつにでもならないと会社を休めなかったんです」とおっしゃるのです。
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人生には色々なことがありますよね。
忙しすぎて睡眠のリズムが崩れ、身体的な疲労が蓄積することもあるでしょう。
仕事だけでなく介護や子どものことなど家族の中に向き合わなければならない問題が起こることもあるでしょう。
ずっと頑張って人生を駆け抜けてきた人が、あるときふと、いったん立ち止まって自分やこの先の人生を見つめ直したいと考えることもあるでしょう。
何か新しいアイデアに出会うために旅に出たいと考える人もいるでしょう。
そんな時に
「疲れたので休みます」とか
「家族の問題に向き合いたいのでしばらく休みたいです」とか
「リフレッシュして新しい仕事のアイデアを得るためにちょっと仕事から離れます」とか
気軽に言えるような社会であったり、会社の空気であれば、会社を休むという目的のためにメンタルヘルス不調にならなくてもいい人がお休みする人のうちのかなりの割合でいるのではないか、と私はみています。
有給休暇があるではないかとか、夏休みや年末年始休暇があるではないかと言われるかもしれませんが、休暇を取るタイミングを自分で決められるかどうかというところがポイントなのです!
OECD諸国の中で、日本の生産性が低いことが指摘されるようになって久しいですが、みんなが余裕なく、とにかくがんばって働いて、リフレッシュのために休みたいと考えてもなかなか休めず、いざしっかり休むためには病気の診断書が必要、という方法しかほぼなく、職場で一人が休むと周囲にもシワ寄せ⇒さらに生産性の低下を招く、という構図があるような気がしてなりません。
では、日本の生産性が低いのは社会や会社だけの責任なのか、というとそうではないと思うのです。
大切になってくるのはアドラー心理学の「自己決定性」というキーワードなのですが、ちょっと長くなりましたので今日はこのへんで。
続きます!