改めて保健指導について考える

ウエタニミレイです。

社員さん達の今年度の健康診断の結果が続々と戻ってきており、
産業医として、お一人おひとりの健康状態を確認しています。

定期健診や人間ドックの結果から予測される将来の病気のリスクを低減させるために
より健康的な生活習慣を選択しましょうね~と医療の専門職が
あの手この手でサポートしていくことは「保健指導」と呼ばれています。

保健指導の歴史は長いのですが、従来の保健指導のあり方に疑問を感じて書いたのがこの本です。

今年も定期健診の結果、例年通り何人かの社員さん達と面談の設定をしようとしたのですが、
その中のある社員さんが「ミレイ先生に会いたくない」と言っていると社内の健康管理担当者から聞きました。

その社員さんのことはお互いによく知っている訳ではないのですが、
健康管理担当者から聞いた話を総合すると、
私に会いたくないというより「産業医に会いたくない」「自分の健康診断結果について他人からとやかく言われたくない」ということのようでした。

法的な話をしてしまうと、会社には社員の健康を守る義務がありますので、
会社に勤めているかぎり、個人の健康問題はその人のみに関係することではなく
会社側にも責任の一端があるということになり、「オレが健康であろうと病気であろうと会社には関係ない」ということにはならないのですが、
社員さん達が「自分の健康診断結果についてとやかく言われたくない」という気持ちには共感できます。

健康管理担当者は言い得て妙な表現をしており、
「健康診断の結果が悪くて産業医に呼び出されるのは、
学生の頃に試験の結果が悪かった時に母ちゃんに叱られるのと同じような気持ちになる」ようなイベントであるらしいです。

産業医である私の個人的な想いとしては、できるだけ社員さん達に会ってお話をして
何か困ったことがある時に相談に来てもらえるようなラポールを形成したいのですが、
何の用事もないのに忙しい皆さんをそうそう呼び出すわけにはいきません。

現実的には、すでに心身の不調を来している人がいる場合は、具合の悪い人への対応の方が優先順位が高くなります。

限られた時間の中で面談の優先順位をつけるとなると、
①すでに心身の不調をきたしている人>②不調の予備軍の人、生活習慣病予備軍の人>③検査結果的にも自覚的にも問題のない人
という順番になります。

自分でも心身の不調の自覚がある①の人には産業医のサポートのニーズを感じてもらいやすいのですが、
②の方々に予防的に関わろうとすると
「健康診断の結果が悪くて産業医に呼び出されるのは、
学生の頃に試験の結果が悪かった時に母ちゃんに叱られるのと同じような気持ちになる」方が少なくないのです。

自分の健康にまつわることはデリケートな話題です。
相手がいくら医療関係者であっても、たとえ産業医であっても
自分のことをよく知りもしない人に口出しをされたくない、とやかく言われたくないという心情はよく分かります。
ましてや特に自覚症状がないような状態であれば言わずもがなです。

他者に自分の話を聞いてもらう、何らかの形で影響を与えるためには
まずは自分のことを好きになってもらう必要があると、かの有名なデール・カーネギーさんも言っています。

よく知らない人、好感も持てない人が言うことを私たちは真剣には聞かないものです。
誰かに自分の話を聞いてもらいたいと思うなら、
自分のことを知ってもらって好きになってもらえるように、よい人間関係をつくることがまず大切なことなのです。

あなたはどんな人に好感を持ちますか?

自分のいいところに注目してくれる人と自分のダメなところに注目する人のどちらが好きですか?

誰かに好感を持ってもらうためには、相手のいいところを見つけることが不可欠ですが、
保健指導がなかなかうまくいかないのは、相手の「ダメな」結果に注目して面談に来てもらう、という
スタート地点にそもそもの難しさがあると思うのですよね。

健康診断の結果が悪くて産業医に呼び出されるのは、学生の頃に試験の結果が悪かった時に
母ちゃんに「ちょっと来なさい!」と呼ばれたことを思い出させるのですよ。
(イメージとしては、テストで0点を取ってママから「のびちゃん!そこに座りなさい!」と言われているのび太ですw)

基本的にはダメなところがある時に、会う人なんですよね産業医や医療関係者って…。

こんな風にそもそも結果を出すことが簡単ではない保健指導を日々頑張っている医療者の皆さんの
気持ちが少しでもフッと軽くなるといいなという思いを込めて本を書きました。

1回や2回の面談で目に見えるような結果が出なくても自分を責めないで、
毎日がんばっている自分をねぎらってあげて欲しいです。

…というわけで、私も「ミレイ先生に会いたくない」と言われることがあっても
いつも頑張っている自分をねぎらってあげて、他の方法で貢献できることに取り組んでいきます(*^_^*)

ちょっと保健指導について色々と書きたい気分なので、次もたぶん保健指導について書きますよ~。

それでは、今日もよい一日を\(^O^)/

コメントを残す