パワハラを考える:タテの関係からヨコの関係へ

「パワハラ」という言葉がずいぶんと一般的になり、耳にすることが増えたと感じませんか?
それもそのはず、法律による防止対策が義務化されるほどパワハラは社会的に深刻な問題として認識されています。
ですが、私たちが本当に考えるべきなのは、この問題の表面的な解決だけではありません。
今日は「パワハラ」を深く掘り下げ、その背景にある心理や、私たちがどう向き合っていくべきかをお話ししたいと思います。

パワハラ上司の心理の奥にあるもの

いわゆる「パワハラ上司」と聞くと、サディスティックで意地悪な人を想像するかもしれません。
ですが、実際には、パワハラ的指導をしてしまっている多くの方が、良かれと思ってその方法しか知らずに行動しているのです。
なぜその方法しか知らないのか?それは、彼ら/彼女ら自身が幼少期や成長過程で、親や周囲の人々からパワハラ的な関わりを受けてきたからです。
たとえば、無条件の愛を受けた経験が少ないと、人は自分の価値を感じにくくなります。その結果、他人を上下関係の中で評価し、自分の価値を守ろうとするのです。

怒りの裏側にある感情

パワハラ行動の背後には、怒りの感情がよく見られます。しかし、その怒りの奥には、実は悲しみや寂しさが隠れていることが多いのです。

たとえば、
・無条件に愛されたかった
・自分の話を否定せずに聴いてもらいたかった
・そのままの自分を認めてもらいたかった
・できないところばかりでなく、できているところを見てほしかった

こうした欲求が満たされないまま成長すると、心の中に孤独感や不満が残ります。そして、それが他者への攻撃として表れることがあります。

タテの関係からヨコの関係へ

「タテの関係」の世界観で生きていると、自分より上にいる人には従い、下に見える人には攻撃的になる傾向があります。タテの関係の世界観にいる限り、自分がパワハラをする側にも、される側にもなる可能性があります。
一方で、パワハラをする人は相手を見ているので、ヨコの関係の世界観にいる人はパワハラのターゲットになりにくくなります。
だからこそ私たちが目指すべきは「ヨコの関係」です。立場や肩書きに関係なく、自分も相手も対等で大切な存在だと感じられる関係性です。
ヨコの関係を築くには、まず自分自身を大切にすることが必要です。
自分に対して「今のままの自分でいいな」と感じられるようになると、他者とも対等な関係を作れるようになります。

自己受容から始める一歩

「今の自分じゃダメだ」と感じてしまうとすると、自らタテの関係を作り出す可能性があるということです。それは自分自身がパワハラ上司になる要素も、パワハラのターゲットになる要素もあり、パワハラに巻き込まれやすい状態と言えます。
自分自身を大切にしていくことは、パワハラに巻き込まれにくくなります。まずは自分自身を受け入れることから始めましょう。

・ダメな部分も含めて、今の自分を認める
・自分を責めるのではなく、労わる
・ありのままの自分にOKを出す

これが、ヨコの関係を築くための第一歩です。

自分らしさを考える

最後に、自分自身を大切にするということは、自分らしさを大切にすることでもあります。
「自分らしさ」とは何でしょうか?それは、他人の期待に応えることではなく、自分が本当に望むことや価値観、感情や感覚に従って生きることです。
パワハラという社会問題をきっかけに、私たち一人ひとりが自分を受け入れ、大切にし、他者ともに自分らしく生きていけるといいですね。

『ありのままの自分で人とつながり、社会の中で自分らしく生きる』
支援職のセルフケアをサポートする産業医・公認心理師の上谷実礼でした。


今日も自分を大切に🍀