先日、オンラインセミナー「アドラー流勇気づけ保健指導」に登壇しました。
160名以上の方がリアルタイムで参加し、活発な質疑応答が交わされる充実した時間となりました。
今回は、その内容の一部をお届けします。
アドラー心理学の視点から見る保健指導の課題
保健指導に関わる方なら、
「 保健指導はそもそも無理ゲー? 」
と感じたことがあるかもしれません。
厚生労働省の制度設計では、「生活習慣病予備軍の人が健康的な行動変容の方向性を自ら導き出せるように支援すること」が目的とされています。
しかし、現場では「健診結果に問題があると言われて仕方なく来た人」が多く、
相談者は必ずしも「行動を変えたい」と思っているわけではありません。
そのため、「相談者の行動変容を促すこと」を保健指導のゴールだと思い込むと、かえって無理が生じます。
保健指導のあり方はそもそも競合的であり、勇気くじきになっており、
「勇気づけて」行動変容を促そうとするのはアドラー的関わりではありません。
講演中には「国の言うことを素直に聞かなくていい」と毒舌ミレイ先生が炸裂しましたが、
これは制度の意図を否定するものではなく、
「現場の実情を踏まえ、支援者としてのあり方を考え直す」ことの重要性を伝えるものです。
社会の仕組みの結果責任を、支援者と相談者が背負わなくてもいいのです。
勇気づけとは?操作的にならないために
アドラー心理学の「勇気づけ」は、単なるテクニックではなく、支援者の“あり方”そのものです。
たとえば、「行動変容を促さなければ」と考えてスキルで何とかしようとすると、
指導的・操作的になりがちで、相談者の勇気をくじくことになりかねません。
しかし、「支援者が自分を大切にし、相手を尊重する」あり方は、
相談者を勇気づけることになり、
結果的に相談者の変化を後押しすることにつながります。
相談者が「この人は私を評価や否定しようとしていない」と感じられることで、安心して話ができるようになるのです。
実践のヒント:保健指導の現場でどう活かす?
セミナーでは、事前に頂いた質問に絡めて日常の保健指導で実践できるポイントを具体例とともに紹介しました。
- 相手のペースを尊重する
保健指導後の継続支援で後戻りしてしまっても、「後戻りすることもありますよね。あったとしても取り組もうとしていますよね」という姿勢で関わる。
目標を維持し続けることはそもそも難しいことなので、「後戻りすること」=「ダメ」とジャッジしない。
- 勇気づけの関わりを意識する
表面的な生活習慣は不適切に見えたとしても、生活習慣の改善のみを目的にするタテの関係ではなく、「この人なりに一生懸命生きてきた姿が今なのだ」と、ヨコの関係で関わる。
- 自分自身を勇気づける
医療職は異常を見落とさないために負の注目をするようにトレーニングがされており、自分自身に対してもダメ出しをしやすい傾向がある。
これは職業病ともいえる。
相談者を大切するために、まず支援者が自分を大切にする。
こうした実践を積み重ねることで、相談者との関係が変わり、結果的に行動変容につながることもあります。
参加者の声
セミナー後のアンケートでは、満足度100%という結果をいただきました。
お役に立てたことが嬉しかったです。
参加者の方々からは、
- とても勉強になるセミナーでした。定期的に見て、自分の保健指導を振り返りたいと感じました。
- 次回の保健指導が楽しみになりました。
- 書籍も読んでみたくなるような内容でした。買いました^^
- ミレイ先生が大好きになりました。
- 明日から早速使えそうな面接技法を教えていただきました。実践的な内容でした。
- 私自身が勇気づけられました。
- 第4期の特定保健指導で結果が出ないと、自身の評価がされない…と戸惑いを感じていましたが、ミレイ先生のお言葉で救われた感じです。ありがとうございました。
といった感想があり、現場での活かし方を考える良い機会になったようです。
「やり方」より「あり方」を大切に
今回のセミナーを通じて何よりもお伝えしかかったことは、
「やり方」「Doing」より「あり方」「Being」が大切だということです。
保健指導において「行動変容を促すこと」がゴールとされますが、
「相談者が自分の健康について安心して話せる場をつくること」が本質的に重要なのではないでしょうか。
支援者自身が無理をせず、自分を大切にすることが、結果的により良い保健指導につながります。
皆さんもぜひ、日々の支援の中で「勇気づけ」を意識してみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!