秋田県市町村保健活動連絡協議会の研修会にお招きいただき、
県内の市町村で活動されている保健師さんを中心に、
オンラインを含めて約100名の皆さんに向けて講演してきました。
研修は、講義とワークショップの2部制でお届けしました。
当日は手づくりの書籍紹介ボードまで作ってくださって、
持参した本はありがたいことに完売となりました。


1部:講演「アドラー流“勇気づけ”保健指導」

講演では、アドラー心理学のエッセンスを土台に、
- 保健指導が「勇気づけ」ではなく「勇気くじき」になってしまう落とし穴
- タテの関係(上からの指導)ではなく、ヨコの関係(協働)で関わるという視点
- ほめることと勇気づけの違い
- 支援者自身を守るための「バウンダリー(境界線)」の考え方
などについてお話しました。
ストレスの多い生活の中で健康行動を変えていくことは、
住民の方にとっても大きなチャレンジです。
「もっとやらなきゃ」「ちゃんと指導しなきゃ」と、
支援者の側が結果に焦ってしまうほど、
相手の「勇気」はしぼんでしまいます。
だからこそ、
- まず来てくれたことそのものに感謝を伝える
- うまくいかない部分だけでなく、すでにできている工夫や強みにも光を当てる
- 相手が大切にしている価値観や、生き方に関心を向ける
といった“勇気づけの視点”を、
保健指導の中にていねいに取り入れていくことを提案しました。
アンケートでは、講演について
- 「大変参考になった」…82.3%
- 「参考になった」……17.7%
という結果となり、アンケートにご回答くださった全員の方から「参考になった」と評価していただきました。

2部:ワークショップ「気づきのレッスン」

講演の後は、支援する側のセルフケアに焦点を当てた「気づきのレッスン」。
- 外界で起きていること(外部領域)
- 身体の感覚や感情(内部領域)
- 頭の中の考えやイメージ(中間領域)
という「気づきの3領域」を手がかりにしながら、
自分の“もやもや”を言葉にしていくワークを行いました。
「5分も話せるかな?」と最初は戸惑っていた方も、
いざ始まると時間が足りないくらい。
話し終えたときの「聞いてもらえた…」という表情の変化が、とても印象的でした。
アンケートでは、会場・オンラインを合わせて
- 「大変参考になった」…86.7%
- 「参考になった」……13.3%
と、こちらも全員の方から前向きな評価をいただきました。

参加者の声
いただいた感想の中から(一部、誤字のみ修正して)ご紹介します。
講演「勇気づけ保健指導」より
- 先生の話し方が心地よく、聴き入ってしまいました。
声かけの例もあり、「こういうふうに声をかけたらいいんだ」と分かりやすかったです。 - 自分自身も大切にしながら、住民と関わっていきたいと思いました。
- 保健指導にも、それ以外のことでも、自分も相手も幸せになれる実践的な技法を知ることができてよかったです。
- 初めてアドラーという言葉を聞きました。
タテではなく、公私ともにヨコを意識していきたいです。 - 「保健指導は行動変容を促すもの=勇気くじき」と先生から聞けてよかったです!
- 先生のお話のとおり「指導」なので、縦の関係、勇気くじき、負の注目で実施していたことを実感しました。
- 「バウンダリー」という言葉を初めて知りました。
お互いの境界線を見極めながら、自分の心や感覚を大切にしながら働きたいと思いました。 - うまくいかないな、もっとやらないと…と焦る気持ちが先行していましたが、相談者を大切にするためにも「まず支援者が自分を大切に」という言葉に少し気持ちが楽になりました。
勇気づけという視点で対象の方と関わっていきたいです。 - 「その人が大切にしているものは何なのか」という点が心に残りました。
病気ではなく、その人本人と向き合うために非常に重要だと感じました。
ワークショップ「気づきのレッスン」より
- 自分の感情に気づき、共感することの大切さに気づかされました。
先生のお話もとても聞きやすく、ためになりました。 - もやもやをそのまま伝えることが自己理解につながると知り、実践していきたいと思いました。
- もやもやを聴いてもらい、自分の中で整理された感覚になりました。
もやもやのまま話してもいいんだと思えました。 - 5分話すのは長いと思いましたが、「伝え返し」をしてもらい、じっくり聴いてもらえたと感じました。
- 話しているうちに自己理解が深まりました。
- 普段、自分の感情や思考に焦点を当てて話すことはなかったので、新鮮でした。
ぜひ先生の著書も読んで、今後も勉強していきたいと思います。 - オンライン参加でしたが、他市町村の方と交流・情報交換ができてよかったです。
- まずは自分自身のことを大切にしながら業務にあたりたいと強く感じました。
おわりに ― 支援者自身が「勇気づけられる」場として
秋田の保健師のみなさんからは、
「熊で大変な中、秋田に来てくれてありがとうございます!」
とあたたかく迎えていただき、胸があたたかくなる思いでした。
また、研修後には「うちにも来てほしいです」と
複数の自治体さんから声をかけていただき、
今回の研修が必要な方に届いたのだなぁと実感しました。
保健師さんをはじめとする対人支援職の方々は、
どうしても「自分より相手を優先する」ことが多くなりがちです。
けれども、自分をすり減らしてしまう働き方は長くは続きません。
自分を大切にすることは、決してわがままではなく、
住民の方々の健康を支え続けるための大切な土台です。
今回の研修が、
- 住民の方への関わり方を見直すきっかけに
- そして、支援者自身が自分を勇気づけるためのヒントに
なっていたら嬉しく思います。
秋田県の保健師のみなさま、事務局のみなさま、
ご参加・準備に関わってくださったすべての方に、
心から感謝いたします🍀

