先日、大手企業さまにてワークショップの機会をいただきました。
テーマは、「人間理解から始まる組織開発―自律神経からアプローチする心理的安全性―」。
ポリヴェーガル理論のレクチャーやゲシュタルト療法に基づく気づきのレッスン、オープンカウンセリングといった盛りだくさんの内容をお届けし、4時間にわたる濃密な時間を過ごしました。
研修の概要
ポリヴェーガル理論と心理的安全性
自律神経について、従来の二元論(交感神経と副交感神経)では説明しきれない複雑な人間の反応に対して、ポリヴェーガル理論の三元論(腹側迷走神経複合体-交感神経系-背側迷走神経複合体)は新たな視点を提示しています。このポリヴェーガル理論の視点から人間理解を深めるレクチャーを行いました。この理論によると、人が安全感を感じられるかどうかは、自律神経レベルの生理反応であり、脳の働きに深く影響します。
たとえば、否定や非難されることの多い環境では、心臓がどきどきしたり、緊張したり、体が微妙に固くなるのを感じたことはありませんか?これは、腹側迷走神経複合体による安全を感じられない状態です。
そして、身体レベルで「安全」を感じていないときに起こる生理的な反応からは、ネガティブな感情や思考が起こりやすくなり、自己防衛的な行動を起こしやすくなります。
一方で、身体レベルで「安全」を感じることができれば、私たちは自然体で自分の力を発揮することができるのです。
心理的安全性と自律神経の関係を知りたい方は↓↓↓
しかしながら、現代社会は、生産性が高いことや能動的であることが重視され、どれだけ疲れていてからだが休むことを必要としていても、安心してじっとしていることが困難となっています。ブレーキをかけて休むことが必要であるにもかかわらず、無理矢理にアクセルを踏み込んで何とか行動しようとしているのが現代人の特徴です。つまり、アクセルとブレーキを同時に踏んだ、いわゆるフリーズといわれる状態に現代人は陥りがちです。
日常の中で安心感を高めるために、まずは『自分の呼吸を感じる時間』をとることから始めてみませんか?さらに詳しい理論や方法についてはこちらの記事も参考にしてください↓↓↓
このような危険を感じる環境では本来の自分らしさを発揮することはできません。
繰り返しになりますが、安全感こそが自分の個性や持てる力を発揮するのに不可欠で、そのためには「そもそも人間とは」「自分とは」という理解が必要です。
自分を知ると人とつながれる理由
「自分を理解した以上に他者を理解することはできない」―対人支援職として重要なのは、自分自身と深く向き合うことです。
私が対人支援者という場合、医師や看護師などの医療職、教師、カウンセラーなどに限らず、部下をもつ上司のように他者を指導・サポートする人も含んでいます。
「自分は本当はどうしたいのか?」
「自分は何を求めているのか?」
このような自分の本当の願いや欲求とつながることが、自分とつながるということです。
自分とのつながりが生まれると、がんばらなくても自然と力が湧いてきます。
そしてその力は、他者とのつながり、ひいてはチーム全体のパフォーマンス向上につながっていきます。
オープンカウンセリング
最後に行ったオープンカウンセリングでは、腹側迷走神経複合体と交感神経系のブレンドから始まり、腹側迷走神経複合体と背側迷走神経複合体のブレンドで終わるという、心理的安全性に包まれた場になりました。これは参加者の皆さんが他者を大切にし、理解しようという姿勢によるものだと考えられます。また参加者の皆さんからオープンカウンセリング後に寄せられた優しさにあふれる温かなフィードバックは、信頼感と安心感を象徴していました。
参加者との時間から感じたこと
講演の中では参加者の皆さんからたくさんの質問をいただきました。皆さんが興味をもって熱心に聞いてくださったことで、勇気づけてもらい、楽しみながら4時間全力でお届けすることができました。熱意ある皆さんと時間をご一緒させていただき、命の流れに沿った、人を大切にする社会を創っていきたいという想いがさらに強くなりました。
また、志を諦めずにコツコツと活動を続けてきた結果、思いがけない地平線にたどり着いているような感覚を得ることができました。このような場に立ち会えたことに、深く感謝しています。
最後に
心理的安全性や自律神経についての理解を深めることは、私たちが自然体で個性を発揮し、より良い社会を築いていくための重要なステップです。
今回のワークショップを通じて、命の流れに沿った人間理解の可能性を参加者の皆さんと共有することができました。このような機会をいただけたことに心から感謝申し上げます。
これからも、『自分を大切にする』ことをテーマに、心理的安全性を育む場づくりに努めていきます。
今日も自分を大切に🍀
『ありのままの自分で人とつながり、社会の中で自分らしく生きる』
支援職のセルフケアをサポートする産業医・公認心理師の上谷実礼でした。