あなたは、すでによくがんばっている!アドラー心理学から学ぶ「不完全な自分」を受容する態度

あなたは今、この文章を読んでいる。

それだけで、あなたはもうがんばって生きているのです。

以前、アドラー心理学をテーマにしたセミナーを開催したときに、参加者の方から「こんなに学んでいるのになかなかできなくて反省する」というご感想をいただきました。

その言葉を聞いたとき、私は思わず声を大にして言いたくなりました。

「反省なんてしなくていいんです!」

すぐにできるようにならないからこそ、私たちは学び続ける。

そして、今日この瞬間まで生き抜いて、休日にわざわざセミナーに参加し、自分を大切にしようとしている。

この事実だけでも、あなたはもう充分にがんばって取り組んでいるのです。

さらに、今この時も、何かを学ぼう、何か気づきを得ようと思って、貴重な時間を使って私のメルマガを読んでくださっている。

そんな風に学び、成長しようとしているあなたは、本当にかけがえのない存在だと心から思います。

今回のブログでは、そんな皆さんへ、アドラー心理学が教えてくれる「不完全な自分をまるっと受け容れる」ことの重要性、そしてそれが日々の対人支援活動セルフケアにどう繋がるのかをお伝えしたいと思います。

「心理学」だけじゃない!アドラー心理学が日常にもたらす「人間知」

アドラー心理学と聞くと、難解な「心理学」という印象を持つかもしれません。

しかし、アドラー心理学は決して学問のための学問ではありません。

日々の生活に役立つ、具体的で実践的な「人間知」を学ぶものです。

アドラーの教えは、本を読んだだけでは身につきません。

なぜなら、それはコミュニケーションや対人関係の中で実践し、感覚として身につけていく「お稽古ごと」のようなものだからです。

私自身、ここ数年でアドラー心理学への理解がさらに深まり、入門編とはいえ、書籍には書かれていないような深い部分までお伝えできるようになりました。

もはや「オタクの領域かもしれませんね」と笑いながら話すほどです。

では、このアドラー心理学が、日々の対人支援にどう活かされるのでしょうか?

そして、私たち支援者自身のセルフケアに、どう繋がるのでしょうか?

できないことがあってもいい。「反省」を手放し「自己受容」へ

セミナー後の感想で聞いた「こんなに学んでいるのになかなかできなくて反省する」という言葉は、きっと多くの対人支援職の皆さんが共感するのではないでしょうか。

常に向上心を持って学び、目の前の相談者のために全力を尽くす支援者だからこそ、自分自身への評価が厳しくなりがちです。

しかし、アドラー心理学は、

「できないことがあってもいい」

「足りないと感じる部分があってもいい」

と教えてくれます。

なぜなら、私たちは皆、不完全な存在だからです。

ここで、私の好きな言葉を贈ります。

「だって人間だもの」By みれを

そう、私たちは人間です。

完璧である必要などありません。

完璧を求めすぎるがゆえに、自分を責め、反省という名の自己否定に陥ってしまうことがあります。

しかし、アドラー心理学では、「反省」よりも「次へどう活かすか」という建設的な視点を重視します。

「勇気づけ」の視点から自己理解を深める

アドラー心理学の重要な概念の一つに「勇気づけ」があります。

これは、他者だけでなく自分自身に対して、この世界の中で所属感と貢献感を感じられるように関わることです。

もしあなたが「完璧にできない自分」を責めているとしたら、それは自分への「勇気くじき」になってしまい、所属感つまり居場所があるなとは感じられなくなります。

本来のあなたは、支援者として日々奮闘し、学び続け、成長しようと努力している。

その事実こそが、何よりも勇気づけられるべきポイントなのです。

常に動き続けるだけでなく、時には立ち止まり、不完全な自分をそのまま受け入れる時間も必要です。

それが、支援者としての持続可能な活動、そしてセルフケアの基盤となります。

アドラー心理学を学ぶことで、私たちは自分自身について理解し、また他者との関係性をより建設的なものにすることができます。

そして、不完全な自分をまるっと受容することの重要性に気づかされるでしょう。

日常業務に活かす「不完全な自分を受容する」ためのヒント

では、この「不完全な自分を受容する」関わりを、日々の対人支援業務にどう活かせば良いのでしょうか。

  1. 完璧主義を手放す
    相談者に対し完璧な支援を提供しようと意気込むあまり、自分を追い詰めていませんか?
    「できる範囲で最善を尽くす」という意識に切り替えるだけでも、心の負担は大きく減ります。
  2. 失敗から学ぶ視点
    「反省」ではなく、「次どうするか?」に焦点を当てましょう。今回の失敗から何を学び、次回の支援にどう活かせるかを考えることで、建設的な成長に繋がります。
  3. 自身の感情を認識する
    対人支援職は、相談者の感情に触れることが多い仕事です。
    自分の感情を押し殺さず、「今、自分はこう感じている」と認識し、それをジャッジせずに受け止めることがセルフケアの第一歩です。
  4. 同僚や仲間に頼る勇気
    全てを一人で抱え込まず、信頼できる同僚や先輩に相談する勇気も大切です。
    不完全な自分をさらけ出すことで、新たな支援の道が開かれることもあります。
  5. 学び続ける姿勢を評価する
    「こんなに学んでいるのに」と自分を責めるのではなく、「学び続けている自分は充分に学ぶ姿勢を持っている」と自分を見てあげましょう。
    その姿勢こそが、支援者としてのあなたを成長させています。

まとめ:あなたは、そのままで、すでに懸命に生きている

今回のブログを通じて、アドラー心理学が「人間知」として私たちの日常生活、特に対人支援職の皆さんのセルフケアと自己受容にいかに役立つかをお伝えしました。

私たちは皆、不完全な存在です。

できないことがあってもいいし、足りないと感じる部分があってもいい。

学び、成長しようと努力しているあなたは、それだけで充分によくがんばっています。

自分を責める「反省」を手放し、不完全な自分をまるっと受け入れる「自己受容」の姿勢が、勇気づけられた支援者としての第一歩になります。

このメッセージが、日々の業務で奮闘されているすべての対人支援職の皆さんの心に届き、セルフケアと自己受容のヒントになれば幸いです。

これからも、皆さんのセルフケアと成長をサポートする情報を発信していきます。

今日も自分を大切に 支援職のセルフケアをサポートする産業医・公認心理師の上谷実礼でした。