ウエタニミレイです。
今日はお仕事関係の話題です。
私は普段、メインで産業医として働いています。
産業医ってどんな仕事なの?と聞かれることがよくありますが、私たちの仕事は会社で働く皆さんが心身ともに元気に安全に働けるように色んな側面からサポートすることです。
そうですね…ここ4~5年でしょうか、タイトルのような相談を受ける機会が増えました。
お話を伺ってみると「空気が読めない」「融通がきかない」「上司や同僚、お客さんの顔色が読めない」「同時に2つ以上の業務ができない」「曖昧な指示をすると、上司の意図を汲んで行動することができない」など、周囲の方が困っていることをいくつも挙げてくださいます。
最近は発達障害という言葉が広く知られるようになり、関連書籍も多く出ています。
また、インターネットでもたくさんの情報が簡単に見つけられます。
ですから、このような特徴を示す方についてネットで検索すると「あの人は発達障害かもしれない」と感じてしまうのはムリもないことなのかもしれません。
そして私のところに相談に来てくださるのです。
「部下が発達障害っぽいんです」と。
病気の診断を付けることが目的の医療機関とは異なり、会社の中で仕事をする上で大切なことは、その人が病気であっても病気でなくてもスムーズに仕事ができるかどうか、ということです。
たしかに仕事上で配慮が必要なことを判断する際に、便宜的に診断名を知っておいた方がいいこともあるでしょう。
けれども現実的に大切なことは、目の前の「この人」がどんな仕事が得意で、どんな仕事はあまり得意ではないのか、目の前の「この人」をサポートするために周囲はどんな協力ができるのかということです。
病名は何かというレッテル貼りにこだわると、組織の中では時に色眼鏡で見られてしまうことにもなりかねません。
ですからメンタルヘルス不調や、最近、相談の多い発達障害疑いのケースをみていく際に、一般的には事例性と疾病性とに分けてみていくことが肝要だという表現をします。
事例性とは業務を推進するうえで困る具体的な事実で、「就業規則を守らない」「仕事の能率が低下している」「同僚とのトラブルが多い」など関係者は当該社員の変化にすぐに気がつくことができるような事象です。
一方、疾病性とは症状や病名などに関することで、「幻聴がある」「統合失調症が疑われる」など専門家が判断する分野です。
職場での問題把握の第一歩としては、病気の確定(疾病性)以上に、業務上何が問題になって周囲や本人が困っているか(事例性)を優先してみていく視点が大切です。
もちろん経過をみながら、必要だと判断される場合には医療機関の受診を勧めることもありますが、診断名をつけることにこだわることなく本人の適性を見極めて、その方にあった働き方をみつけていくことは可能です。
発達障害かどうかに関わりなく、目の前の「その人」に共感し、理解しようとすることはできるはずです。
そして、このような方がいらっしゃる場合、周囲も自分のコミュニケーションについて見直すことができるチャンスかもしれないのです!
そもそも、曖昧な指示の意図を汲んで行動することはかなり高度な技術であるともいえます。
ですから、私が関わる場合には、上司や周囲の方に「もう少し指示の仕方を工夫できることはありませんか?」と本人だけでなく周囲を勇気づけることで、うまく仕事を続けられるようにサポートすることもあります。
ちょっと一緒に仕事がしづらいなぁと感じるような方がいる時に、現場で対応する前にいきなり「ミレイ先生、面談して下さい」と相談されることも珍しくないです。
面談をさせていただくのはやぶさかではないですし、たっぷりの勇気づけと必要なサポートはもちろんさせていただくのですが、「この人は病気みたいだから産業医におまかせ」と考えるのではなく、発達障害かどうかに関わらず現場でも何かできることはないですか?と感じることも多く、今日はこんな記事を書いてみました。
ちなみに今日の記事はこちらを参考にしました。
厚生労働省のサイトですが、とても分かりやすくまとまっていてオススメですよ(*^_^*)