カウンセリングの父として有名な
カール・ロジャーズは一貫して
「どうすれば私は援助的でありうるか」
という問いに答えようとしてきたと言われています。
「セラピストがどう動けばクライアントが変わるか」ではなく、
「クライアントが変わるための促進的な関係を
どのようにすれば築くことができるのか」という問いです。
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ロジャーズが提唱したカウンセラーの本質的態度としての
“中核三条件”は有名ですが、
これはカウンセラーに限らず、
他者を援助したい、何らかの影響を及ぼしたいという
意図を持つ人には必要とされる本質的態度だと思います。
三条件は、無条件の積極的関心・共感的理解・自己一致です。
私は、三条件の中でもっとも難解かつ重要なものは自己一致だと思います。
自己一致の説明は様々ありますが、私が研修で紹介しているのは下記です。
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自己一致とは、
●セラピストが、この関係の範囲内では、一致した、純粋な、統合された人間でなければならないということである。それは、この関係のなかで彼が、自由に深く自分自身であり、彼の現実が自分自身についての彼の気づきによって、意識的にせよ無意識的にせよ、表面的なものだけを表現することの反対なのである。
●私が自分自身との間に援助的な関係を形成することができるならばー自分自身の感情に感受性豊かに気づくことができて、それを受容することができるならばー私は他者に対しても援助的関係をつくることができる可能性が高まる、ということである。(中略)
それは、私との関係において他者の成長を促進しようとするのならば、私が成長しなければならないということを意味している。
●つまり、セラピストが自分自身との間に援助的関係を作ることと、クライアントとの間に援助的関係を作ることは、密接につながっているということである。
●自己一致とは、「セラピストが関係のなかで、自分自身の感情をありのままに受容し、共感的に理解しようとすること」である。
「ロジャーズの中核三条件 一致 カウンセリングの本質を考える1」 創元社より
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「自己一致(Congruence)」は日本語訳が
適切でないという見解もあるようですが、
私なりの理解としては「自分らしくある」
「自分のままである」というイメージです。
そして、ネガティブなものであってもポジティブなものであっても
自分自身の感情や感情に気づき、
役割にとらわれずにそれらを表出できるということかなと思います。
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つまり、自分らしくある、自分のままであることが
他者の変化を促すための条件だということです。
これってめちゃくちゃ難しいです!
多くの人は、過去に傷ついて封印してしまった、
充分に味わうことをしなかった未完了の感情と
自分の人生を制限する思い込みであるビリーフによって、
自分らしさから離れてしまっています。
そして、役割や立場の分厚い仮面をかぶっています。
自分らしさから離れてしまった状態で、
役割や立場の分厚い仮面をつけた状態で、
他者に影響なんて及ぼせないし、変化なんて促せません。
だって、嘘っぽいもん。
自分らしさを取り戻すため、
自分のままであるためには未完了の感情をしっかりと受け止め、
自分を制限する思い込みを書き換える必要があるのです。
役割や立場の仮面を外して、
本来の自分とつながる必要があるのです。
そのためにカウンセリングやセラピーを受ける必要があるのです。
カウンセリングやセラピーって
心を病んだ人のためのものではないのですよ。
自分らしく生きたい、
自由な人生を生きたい、
自分オリジナルの形で社会に貢献したいと願う
全ての人に役立つものです。
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○○○講座の講師を名乗っているということは、
他者に何らかの変化を促したいわけですよね!?
であれば、自分らしくある、自分のままである
ということがとても大切なんです。
そして、そのために、カウンセラーやセラピストだけでなく、
研修や講座の自称講師な人たちにも自身がクライアントになり、
自分に向き合うというプロセスが絶対に必要だと思います。
私の周りは講師だらけですが、
周りを見渡しても自分自身がクライアントになって
カウンセリングやセラピーを受けている人はほとんどいません…。
もしも皆さんが誰かの講座を受けるなら、
ぜひ講師に「あなたはこれまでにカウンセリングや
セラピーを受けてきましたか?」と聞いてみてください。
講師の人間的な深みが分かると思います。
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と、まあ、私がこんなことが気になるのは
思いっきり投影のメカニズムが働いているわけで、
私自身も昔は自分に向き合わないで
講師をしていた時代があったということなんですよね…。
あの状態でよくやってたな、と今では思います…。
だから苦しくなっちゃったのですよね…。
これからも定期的にセッションを受けて
自分らしくあるためのメンテナンスをしていきます(*^_^*)