心の健康が体にもたらす影響
前回の記事『対人支援職が知っておくべきストレスケア』では、ストレスが健康や生活習慣に及ぼす影響について考察しました。今回は、そのテーマをさらに掘り下げ、心の健康が身体にどのように影響を与えるのかを探ります。
私たちは日常生活の中で、多くのストレスにさらされています。特に、対人支援職や経営者・管理職のように高い責任を担う立場にある方々にとって、ストレス管理は健康維持やパフォーマンス向上のための重要な要素です。
本記事では、心の健康と身体の関係性を見つめ直し、より良い健康のためのヒントをお伝えします。
臨床を離れて見つけた新たな視点
臨床医として働いていた私は、ある時期に臨床の現場を離れる決断をしました。この選択は、周囲からさまざまな批判や懸念を受けるものでしたが、結果として患者さんやクライエントとじっくり対話する時間を得ることができました。
多くの方々と関わる中で、慢性的なストレスが身体に与える影響を目の当たりにしました。それは、体が「ノー」と言うように現れるさまざまな病気の形で現れます。特に、「自分らしく生きていないこと」や「感情を抑え込むこと」が、健康に深刻な影響を及ぼしていることを確信するようになりました。
心と病気のつながり
私にこの気づきを与えてくれた一人に、乳がんを患っていた今は亡き友人がいます。彼女は病気を通じて、自身の心や感情に向き合う大切さを教えてくれました。
彼女との対話を通じて、性格や考え方、心のあり方が病気と深く関係していることを実感しました。感情やストレスが病気に与える影響を目の当たりにしながら、私自身も心の健康の重要性を再確認する機会となりました。
『身体が「ノー」と言うとき』から学ぶ感情コンピテンス
ストレスが病気を引き起こす仕組みを深く理解するために、私は『身体が「ノー」と言うとき』という書籍を手に取りました。著者はバンクーバー在住の緩和ケア専門医で、ストレスがどのように病気へと変換されるかを身体的・生化学的に解説しています。
※感情コンピテンスとは、感情を適切に認識し表現する能力のことです。
この本では、健康を保つために必要な「感情コンピテンス」が次のように説明されています:
- 自分の感情や心の動きを感じ取る能力
- 自分の要求を主張し、心の境界を守るための表現能力
- 過去に引きずられない精神的な反応を身につけること
- 他者の承認を得るために自分の要求を抑えないこと
これらを欠くとストレスが蓄積し、健康を害するリスクが高まります。特にビジネスパーソンは理性的な判断を求められる場面が多く、感情を抑えがちな傾向があります。この抑圧が健康に与える影響について、改めて考える必要があります。
病気を予防するために必要なこと
病気の予防には、前回の記事で触れた「ストレスケア」のように身体的なケアだけでなく、心の健康を保つことが欠かせません。
心の健康を保つために必要なことは、難しい知識を学ぶことではなく、ありのままの自分を受け入れ、自分自身を理解し、感情や心の声に耳を傾けることです。自分を大切にすることが、心身の健康の鍵であり、より良い人生への第一歩となるのです。