【研修レポート】「ラインケアと心理的安全性」を体感する

大手企業の管理職の皆様を対象に、「ラインケアと心理的安全性」をテーマにした研修を実施しました。この研修では、部下のメンタルヘルスを支援する上での管理職の役割を学び、心理的安全性の重要性を体感することを目的としました。

ラインケアの役割と管理職の責任

研修の前半では、「ラインケア」とは何かについてレクチャーを行いました。

厚生労働省が定める「労働者の心の健康保持増進のための指針」において4つのメンタルヘルスケアが提示されており、その中で管理監督者が果たすべき役割としてラインケアが挙げられています。
今回の研修ではラインケアの中でも、『部下の異変の早期発見と対応』、『部下からの相談対応』に注目してお伝えしました。メンタルヘルスケアでは、早期発見と早期対応が重要です。上司が部下の異変にいち早く気づくことと、不調を感じた際に部下がためらわずに相談できることの両面が不可欠です。

管理職の方が部下の変化に気づくためには日常からの部下の観察が重要であること、メンタル不調のサインや注目するポイント、専門家に相談すべきタイミングについて学んでいただきました。

部下が相談しやすい環境をつくるために、「心理的安全性」の概念を説明しました。心理的安全性とは、「このチームでは、失敗や困りごとを率直に共有しても大丈夫だ」と感じられる雰囲気のこと。つまり、「“否定・非難・攻撃をされない”と感じられて、安心して話ができて自由に意見が言える心理状態」と言い換えることができます。そのための第一歩としては、上司が部下の話を否定・非難せずに受け止めることが重要です。

しかし、会社組織では、課題解決や目標達成が前提となっているため、否定から始まりがちです。そのため、心理的安全性を体感する機会が少なくなっているのが現状です。

カードゲーム「LwSi」で心理的安全性を体感

理論を学ぶだけではなく、実際に体感することが心理的安全性の理解には欠かせません。

そこで、研修の後半では「LwSi(ルーシー)」を活用しました。LwSiは、アドラー心理学の「共同体感覚」を体感できるように、今回の研修を一緒に実施した金井津美さんと開発したカードゲームです。

共同体感覚とは、「ここには居場所がある」「仲間は自分を攻撃しない」「ここでは自分は役に立てている」と感じられる状態のことですので、心理的安全性と近い概念であり、LwSiを通じて心理的安全性を体感することができると言えます。

↑↑↑ LwSiについて詳しく知りたい方は画像をクリックでご覧いただけます ↑↑↑

このゲームでは、プレイヤーは修行中の魔法使いとなり、人間界の困りごとを解決しながら成長していきます。しかし、一人で解決できない場面もあり、そのときに仲間に助けを求めたり、協力を受け入れたりする選択が必要になります。また、困りごとの解決策が正しいかどうかは、チームでの合議によって決まります。

実際にゲームをプレイした管理職の方々からは、以下のような感想が寄せられました。

  • 「普段の仕事の役割分担が、そのままゲームの中でも出てきた。」
  • 「自分の手持ちカードだけでなくメンバーの手持ちカードも見ていないとゲームが進まないことから、普段から部下をよく観察していないと適切なフィードバックができないことに気づいた。」
  • 「心理的安全性が高まり意見が活発に交わされるようになると、チームの一体感が生まれ、結果的に目標達成が早くなると実感した。」

学びの共有と実践への第一歩

研修の最後には、ゲームを通じて得た気づきを振り返る時間を設けました。

「仕事でも、心理的安全性が高いチームでは意見が言いやすく、成果が出やすい」と気づかれた方もいらっしゃったかと思いますし、一方で「ゲームでは自由に発言できるのに、仕事になると口をつぐんでしまいがち」と気づかれた方もいらっしゃったかもしれません。

また、「これを言ったら否定されるかも…」と発言を躊躇する場面からは、部下の気持ちと重なることに気づくきっかけになったのではないでしょうか。上司の一言や態度が、部下の発言のしやすさにどれほど影響するかを、実感していただけたのではないでしょうか。

今回の研修を通じて、管理職の皆さんが「ラインケア」と「心理的安全性」の大切さを実感し、職場での実践につなげていただければ嬉しく思います。心理的安全性のある職場の雰囲気が、部下の成長を促し、組織全体の生産性向上にもつながることを期待しています。

最後に、一緒に研修を実施した金井津美さん、そして参加してくださった皆さまに感謝いたします。