先日、産業医として関わっている職場で、
ピアサポーターの方々を対象にした研修を行いました。
今回のテーマは
「自分をすり減らさないための傾聴」。
対人支援職や管理職の方は、
知らず知らずのうちに自分をすり減らしてしまうことが少なくありません。
この研修では、
「持続可能な支援のためのマインドとスキル」を
産業医・公認心理師の視点からお伝えしました。
「問題解決」という罠から抜け出す
ピアサポーターの方々のように、
対人支援を行う方は、
「相手の悩みを解決しなければならない」と
陥りやすいのではないでしょうか。
こういった方々は、
真面目で責任感が強く、やさしさを備えている印象があります。
だからこそ、
- 頼られると、ちゃんと応えてあげたいと思ってしまう
- 困っている人を見ると、放っておけない
- 自分のことを後回しにしても、相談に乗ってしまう
つい、相手の人生まで背負い込んでしまいます。
けれど、今回の研修でまずお伝えしたかったのは、
「聴くこと=問題解決ではない」という視点です。
相談者はアドバイスや正解を求めているとは限りません。
アドラー心理学では、
人間の行動の目的は
居場所(所属感)
役に立っている(貢献感)
を得ることにあると考えます 。
つまり支援の場において、
技術以上に重要なのは
「ここは自分の居場所であり、大切に扱われている」
という安全安心の感覚です。
そのため相談して話を聴いてもらえると、
- 自分の存在をそのまま受け取ってもらえた
- 評価されずに、そこにいていいと感じられた
と感じ、たとえ問題は解決していなくても、
それだけで、心がふっと緩むことがあります。
そうすると、相談者は少しずつ、
自分自身と向き合う力を取り戻していくことがあります。
「自分を守ること」は、冷たさではない
研修後半では、
バウンダリーについても扱いました。
ピアサポートの場面では、
「仲間だからこそ」
「同じ立場だからこそ」
相手の感情を自分のことのように引き受けすぎてしまうことがあります。
けれど、
- 「私の領域」と「相手の領域」を分ける
- できることと、できないこと
- 聴けるときと、今は難しいとき
それを区別することは、
冷たさではありません。
むしろ、
支援者が自分自身の安全を確保し、
結果として相手を尊重し、
長く関わり続けるために必要な姿勢です。
適切にバウンダリーを引けるからこそ、
自分の責任の範囲を超えてまで頑張りすぎず、
適切に専門職に「つなぐ」判断も可能になります 。
「全部を背負わない」
「完璧な支援者にならなくていい」
そうした視点が、
支援する人自身を守り、
結果的に周囲との関係も健やかにしていきます。
「明(あか)らめる」→「あきらめ」という視点
研修の締めくくりとして、「あきらめ」の重要性もお伝えしました 。
ここでの「あきらめ」は、
責任を放棄するということではありません。
現状を「明らめ(明らかに見極め)」、
必要以上に責任を背負わない
という意味です。
「自分が我慢すればいい」という自己犠牲の上にある支援は、
長くは続きません。
支援職こそ、
自分自身のどんな感情も否定せず受け入れ、
日頃の頑張りを自分自身がねぎらい、
「誰かに話を聴いてもらう体験」を持つことが大切です。
こうした「自分を大切にすること」こそが、
持続可能な支援のための第一歩です。
傾聴とは単に「うまく話を聴く技術」ではなく、
自分と相手とのあいだに、安全安心な関係を築くこと
です。
- 挨拶をすること
- 感謝を伝えること
- 相手の存在に気づくこと
そうした日常の積み重ねが、
安心して話せる土台になっていきます。
そして大切なのは、
その土台は「支える側の自己犠牲」の上には成り立たない、ということです。
今回の研修が、
ピアサポーターの皆さんにとって、
自分を大切にしながら仲間と関わり続けるための
小さなヒントになっていたら嬉しく思います。
ご参加くださった皆さん、
ありがとうございました🍀
