太っているかどうかは問題ではない

ウエタニミレイです。

定期健康診断の結果や人間ドックの結果などから
将来、病気にかかるようなリスクの人を選んで呼び出し、
「今の生活習慣を続けると将来、こんな病気にかかるおそれがあるから
現在の好ましくない生活習慣をかくかくしかじかのように改めてください」と
専門家としてお伝えする面接は一般的に保健指導と呼ばれています。

私は産業医として主に会社ではたらく世代の方々を対象に
長らく保健指導というものを行ってきましたが、
単に将来的に命に関わるリスクのある病気にかかる可能性が高いから
やせて下さいとかお酒を控えて下さいとかタバコを辞めてくださいと
「指導」する保健指導の無意味さを痛感してきました。

特にはたらく世代の皆さんの生活習慣が悪くなりがちなのは
ほとんどがストレスをなんとかやりすごすための対処行動として
食べすぎてしまったり、お酒を飲み過ぎてしまったりすることだからです。

また、長時間労働や長い通勤時間の影響で
夕ごはんの時間が遅くなることの要因も大きいでしょう。

国家予算の中で増え続ける医療費を将来的に削減させるため、という名目で
2008年から特定健診・特定保健指導制度が始まりましたが
もしも本気で国民の生活習慣を改善させたいと思うなら
世の中にあふれている糖質や脂質過多の食品を増税するとか
アルコールやタバコの価格を上げるなどの
上流での取り組みはいくらでもできるはずなのです。

健康に悪そうな食品を増税するなんて
経済界からの反発があることは目に見えていますので、
そのような抵抗の強そうな施策を避けて
もっともらしいロジックを作って
保健指導の成果のあった保険組合に対して
保険料を安くするというアメを用意して
現場の保健指導実施者に責任を押しつけているようにしか思えません。

世の中にあふれる健康を害するものは野放しにしたまま、
はたらく人の生活習慣が乱れる原因となる
長時間労働やストレスの原因は放置したまま
出口のところで現場に責任を押しつけて
「あなたの生活習慣を変えなさい」と国民個人を締め付けるような
保健指導って非人道的だと感じます。

それにあなたの現在の生活習慣は正しくないという前提で相談者と対峙する
従来型の保健指導は相手を裁く競合的なものだとも感じます。
効果が出ないのも当然だと思います。
誰だって他人から裁かれたくないですから。

本には書かなかったのですが
私が従来型の保健指導に疑問を感じて本を書きたいと考えたのは
このやり方で本当に医療費が削減されるって
みんな信じているのかな?という疑問があったからです。

私たちはそれぞれに毎日を懸命に生きています。
健康診断や人間ドックの結果だけで判断されて
生活習慣を変えた方がいいと言われることは
すなわち生き方を変えろと言われることに等しいです。

「あなたの生活習慣は間違っている」と裁くような競合的な構えはやめて、
それぞれの人が現在の生活習慣、生き方を選択するに
至ったプロセスに想いを馳せて
目の前の人に共感して、寄りそい、
一緒に何ができるかを考えていく協力的な医療者でありたいと思います。

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