ウエタニミレイです。
もう15年近く産業医をやっていますが、
オフィス移転のタイミングに遭遇することはめったにありません。
最近、クライアント企業が本社社屋を移転し、
その際に、ありがたいことに私の意見も聞いていただく機会がありました。
社長が一番困っておられたのは喫煙室についてでした。
クライアント企業の喫煙率は15%程度。
旧社屋では屋上が喫煙所になっていましたが、
新社屋が移転する予定のビルはビル内全面禁煙。
電子タバコならO.K.という契約条件でした。
ビルの所在地エリアはエリアのほとんどの場所が条例で禁煙になっており、
コンビニや商店の前の喫煙スペースは徐々に撤去されていました。
ビルから出て、一番近くの喫煙所まで行って戻ってくるのに20分近くかかる、という状況でした。
社長は以前より社員の健康を考えて、
喫煙者に禁煙を勧めておられたので、
当初はオフィス移転をきっかけにオフィス内を完全禁煙にすることを検討しておられました。
そんな経緯の中で「喫煙スペースをどうすればいいか、ミレイ先生のご意見を聞きたい」
と私に意見を求めて下さいました。
社長としては諸手を挙げて賛成ではないものの、
オフィス内に電子タバコを吸えるスペースを作る、というプランの他に、
医療機関で禁煙治療を受けるなら会社が治療費を負担する、というプランもあったようです。
私の意見は
「喫煙者の皆さんの意見を聞いてみたらどうですか?
自分達で決める、というプロセスが大切だと思います」
でした。
そうして、喫煙者の皆さんの間で話し合いがもたれ、
「会社にお金を出してもらって禁煙するなんてまっぴらゴメン!」
「タバコをやめる時は自分で決めたい!」
などのご意見が出ました。
結果的に、喫煙者11人中9人が電子タバコに転向。
会社側と話し合って、オフィス内に電子タバコスペースを作りました。
残りの2人は紙タバコを継続するものの、
執務時間中は吸わないようになったとのこと。
話し合いのプロセスを通じて、
喫煙者の皆さんの結束力が高まり、
会社側と交渉する時も一枚板な状態で対話が進んだそうです。
そして、喫煙者の皆さんは、オフィス内の電子タバコ喫煙スペースは
自分達の力で勝ち取ったものだ、という意識があるので
スペースの整理整頓や掃除を自主的に行っておられます。
移転後に巡視に行きましたが、自主的に空気清浄機を置いたり、
芳香剤を置いたりされて、とてもキレイなスペースとなっていました!
無事に移転が終わって、喫煙所問題を振り返ってみて、
一連のプロセスの中での私の意見、
「喫煙者の皆さんの意見を聞いてみたらどうですか?」
が最高に良かった! 当事者の意見を聞くことは全く考えていなかった!
と社長がコメントしてくださいました。
電子タバコは初期投資が必要ですが、
喫煙者の皆さんの満足度も高いようです。
これって、他のことにも当てはまると思うのですよね。
私たちは結局、自分で決めたことしかやらないんです。
他人から、ましては会社から一方的にルールを押しつけられると
押しつけられ感、やらされ感が出て、
自主的に何かをしようという意欲がみるみる低下します。
私たちの意欲の源泉は
「自分で決める」
ということにあるな、と再確認した出来事でした。
喫煙所問題、無事に一件落着~。
めでたし、めでたし。