忙しさの中で置き去りになる「身体」
先日、千葉産業保健総合支援センターにて、
ゲシュタルト療法のミニレクチャーとオープンカウンセリングを行ってきました。
私たちは日々、仕事や家事に追われて過ごしています。
そのため、自分の身体に意識を向ける時間は、意外と少ないかもしれません。
実は、感情は身体から生まれます。
外からの刺激や内的な記憶の想起によって身体に反応が起こり、
その反応が「情動」となります。
情動は、
- 血圧
- 体温
- 呼吸
- 胃腸の動き
など、他者による観察や測定が可能な身体の反応を指します。
そして、その情動が私たちの大脳皮質で「主観的に感じられる体験」として認識されたものが、
「感情」なのです。
怒り・喜び・悲しみ・楽しさ。
それはすべて「その人がそう感じた」ものであり、
その人が「怒っている」と言えばそれは怒りの感情なのです。
「そんなことで怒るのはおかしい」と他者が評価するものではありません。
自分の感情を理解する第一歩
対人支援職の方はよく「共感が大切」と言われるかと思います。
けれども、人の感情を理解するためには、
まずは自分の感情を理解することが大切です。
自分の喜怒哀楽がわからないのに、
人の喜怒哀楽をわかることはできません。
自分の感情を理解するめには、
感情を生み出す身体感覚に気づくことが第一歩となります。
たとえば、
「心臓がドキドキしている」
「手のひらが熱い」
など、身体の小さなサインに気づけるほど、感情も自覚しやすくなるのです。
実際に「自分の心拍を感じ取る力が高い人は、感情の自覚に長けている」という研究結果もあります。
つまり、共感力を高めるためには、
「今、自分の身体はどうなっているかな?」
と意識を向けることが、何よりの練習になるのです。
理論からカウンセリング実践へ
今回のレクチャーでは、ゲシュタルト療法の基本理論の中からホメオスタシス(恒常性)と気づきの3領域を取り上げました。
ゲシュタルト療法のユニークな点は、ホメオスタシスを「生理的機能」だけでなく「心理的機能」にもあると考えることです。
- 身体にはもともと恒常性を維持しようとする力(ホメオスタシス)が備わっている
- 気づくことができれば、自己調節していける
これがカウンセリングに活かせる大きなポイントだと思います。
オープンカウンセリングでは、特に身体の安全感を大切にしました。
身体が安全安心を感じると、自然と心のあり方も変わっていく。
そのプロセスを、参加者の方と一緒に体験できたのはとても印象的でした。
まとめ
共感力を高めるのに、特別なトレーニングはいりません。
自分の感情を理解することができれば、他者の感情を理解できるようになります。
そして、自分の感情を理解するのには、身体に注目することが第一歩です。
まずは、日常の中で次のような小さな実践から始めてみてください。
- 自分の呼吸の深さやスピードを感じてみる
- 足が床や地面に触れている感覚を意識する
- 食事中に「今、どんな味や香りを感じているか」に意識を向ける
ほんの数秒でも「今、ここ」にある「身体」に気づくだけで、
感情への理解が深まり、他者への共感も豊かになっていきます。