ハラスメントと言われるのが怖くて、
部下に必要な指導もできません。
こうした管理職の声をよく耳にします。
ハラスメント対策として
「○○はNGです」
と禁止事項を並べるだけでは、
職場は変わりません。
むしろ、
指導を恐れた管理職が何も言えなくなり、
人が育たず、
職場の安全にも影響が及ぶ
という悪循環に陥ることがあります。
先日、
運輸関連企業某社の経営層・管理職の皆さんを対象に
2時間のハラスメント研修を担当しました。
テーマは、
事故は”技術”ではなく”関係性”で防ぐ
——人と安全を守るコミュニケーション
今回はその内容と、研修を通じて見えてきたことをお伝えします。
「ハラスメントはダメ」だけでは職場は変わらない
この企業では、日々の安全運行を支えるために、
一人ひとりが高い責任感を持って仕事に取り組んでいます。
一方で、
人手不足
世代間の価値観の違い
ハラスメントへの対応
という、
多くの企業が共通して抱える課題にも直面していました。
多くのハラスメント研修では、
「○○と言ってはいけない」
「△△はハラスメントになる」
といった禁止事項の知識伝達で終わりがちです。
しかし知識だけでは職場はなかなか変わりません。
変わるためには、職場の関係性が変わる必要があります。
だからこそ今回の研修では、
「ハラスメントを防ぐこと」
そのものをゴールにはしませんでした。
目指したのはこうです。

その土台となるのが、「心の安全」です。
パワハラにならない指導の土台——「心の安全」とは何か
安全な職場をつくるためには、
技術やルールだけでは十分ではありません。
安心して
相談できる
失敗を隠さずに
話せる
困ったときに
助けを求められる
そんな「心の安全」(心理的安全性)があってこそ、
人は学び、成長します。
そして組織全体の安全にもつながっていきます。
研修の中で、
「企業の求める成果の土台には、心の安全がある」
とお伝えしました。
自分に厳しい人は、部下にも厳しくなる
研修で印象的だった場面をご紹介します。
参加者は若手時代に厳しい指導を受けてきた経営層・管理職の皆さんです。
研修の中で、こんなワークを行いました。

若い頃の自分を思い浮かべ、
その頃の自分声をかけてみましょう。
多くの参加者から返ってきたのは
励ましではありませんでした。
勉強不足だった自分が悪い!
あれは自分が出来てなかったから仕方ない
自分を認めるどころか、
自分を責める言葉が次々出てきたのです。
予想以上に、
自分自身に厳しい方が多いことに驚きました。
はっきり言います。

ハラスメントをなくす第一歩は、
まず自分に優しくすることです。
なぜなら、
自分に厳しい人は、
知らず知らずの内に
部下にも厳しい関わりをしがちだからです。
その結果、
意図せずハラスメントにつながることがあります。
そこで予定を変更し、
「セルフよしよし」
のワークを追加しました。
自分で自分を抱きしめて、
「よく頑張ってきたね。」
と、自分自身を認めるワークです。
研修後には、
日頃からハラスメント対応に携わっている方から、

セルフよしよし、
すごくいいですね。
という言葉もいただきました。
優しくすることと、
甘やかすことは違います。
自分を認めることができる人ほど、
人を認めることもできます。
皆さんも、
今日も一日頑張った自分に
「セルフよしよし」してくださいね。
「当たり前」の中に埋もれた「できていること」を見つける
もう一つ印象的だったのが、
「当たり前にできていること」
を見つけるワークです。
そもそも、考えてみてください。
一生のうちに出会う人は、
どれほど多くても数千人と言われています。
その中で、偶然同じ会社に入り、
たまたま同じ職場で働く。
これは、奇跡のようなご縁です。
だからこそ、
「一緒に働けること」自体が、
本来はありがたいことなのです。
「有難い」の反対は、
「当たり前」。
当たり前になると、
人は感謝を忘れます。
感謝を忘れると、
できていることより、
できていないことばかりが目に向くようになります。
ワークで参加者から挙がってきた声には、
こんな内容もありました。
毎日きちんと出勤している
挨拶ができている
多くの人が眠っている時間に仕事をしている
このような「当たり前」すぎて見逃されがちな
「できていること」が次々と挙がりました。
特に安全要求度の高い組織では、
できていないことや改善点に目が向きやすいものです。
それでも参加者の皆さんが、
「できていること」を見つけていく姿に、
希望を感じました。
人は、できていないところを指摘され続けても育ちません。
できていることに気づき、
それを認め合える関係性があるからこそ、
「もっと頑張ろう」という
前向きな力が生まれるのだと思います。
社長も一緒に学ぶ——トップの姿勢が組織を変える
今回特に印象的だったのは、
社長ご自身が最後まで真剣に講義を聞き、
ワークにも参加されていたことです。
組織文化は、
「こうしなさい」と言うだけでは
変わりません。
トップ自らが学び、考え、
実践する姿勢を見せることが、
組織全体への何よりのメッセージになります。
研修終了後、社長からいただいた一言が印象に残っています。
いや〜!研修っていいもんですね!
また、遠方から足を運んでくれた参加者からは、
面倒だと思っていたけれど、
来てよかった。
という声も聞かれました。
研修の時間が、
それぞれの管理職の皆さんにとって、
自分自身や部下との関わり方を見つめ直す機会になったのであれば、
とてもうれしく思います。
ハラスメント対策の本質——「心の安全」が人と組織を育て
ハラスメントをなくすことは、もちろん大切です。
しかし、それはゴールではありません。
ハラスメント対策で本当に目指したいこと
人が安心して働ける
職場をつくること
人が育ち、
安全が守られる
組織をつくること
企業が求める成果
につなげること
ハラスメント対策の本質は、
ここにあると思っています。
今回の研修を通して、
その大切さを改めて確信しました。
このような貴重な機会をいただき、
誠にありがとうございました。
社長はじめ、
最後まで真剣に学び、ワークに取り組んでくださった皆さま、
ご担当者様に心より感謝申し上げます。
今回の学びが、
皆さまの職場で「心の安全」を育み、
人と安全、
そして組織の成果につながる一助となれば幸いです🍀
