【登壇報告】管理職向け傾聴研修-部下が求めているのは「答え」じゃない?

部下から相談されたとき、こう思うことはありませんか。

何かアドバイスをしなくては

上司として、答えを示さなくては

もちろんそれは、部下の役に立ちたいという気持ちの表れです。

けれども、部下がそのとき本当に求めているのは、 「答え」ではないこともあります。

先日、小売業の部課長の皆さまを対象に、 『「心の安全」を育てる傾聴~人を理解し、新たな気づきを生む傾聴スキル~』 をテーマに研修を行いました。

今回はレクチャーの時間を絞り、実際に 「聴く」ことを体験するワーク を中心に構成しました。

上司は、つい「答え」を伝えたくなる

部下から「どうしたらいいでしょうか?」と聞かれると、上司としては答えたくなるものです。

これまでの経験から解決策を考えたり、「こうしたらいいんじゃない?」とアドバイスしたり。

ときには「それはこういう理由だから」と説明することもあるでしょう。

ところが、ちゃんと答えたはずなのに、相手はなんだか納得していない。

アドバイスしたのに、また同じ話をしてくる。

この話、いつまで聴けばいいんだろう……。

そんなことも起こります。

もしかするとそこには、
上司が提供しようとしているものと、
部下が求めているもののズレ

があるのかもしれません。

部下がその瞬間に求めているのは、問題解決やアドバイスではないことがあります。

大変だったね

ここまでよく頑張ってきたね

それは悔しかったね

そんなふうに、 自分の感情を受け止めてもらうことや、頑張りを認めてもらうこと を求めているのかもしれません。

何を求めているかは人によって、そしてそのときによって違います。

分からなければ、本人に聞いてみればいい。

これも、今回の研修でお伝えした大切なポイントのひとつです。

「3分話す」って、意外に長い

研修では、傾聴について説明する前に、まず二人一組になって、普段どおりに相手の話を 3分間 聴いてもらいました。

すると、

3分って、意外に長い

普段の会話では、相手が話している途中で、 「分かる、分かる。私もね……」と自分の話をしたり、 「だったら、こうしたら?」とアドバイスしたり、 「でも、それって……」と自分の考えを伝えたりしがちです。

相手のためだけに3分間を使う。

やってみると、これが案外難しいのです。

傾聴のワークの様子

「分かってもらえた!」を育てる6つのポイント

研修では、「分かってもらえた!」と感じてもらうための聴き方として、3つの基本と3つのスキルをお伝えしました。

3つの基本

体と顔を向ける
最後まで話を聴く
すぐにアドバイスしない

3つのスキル

沈黙を大切にする
理解の確認をする
感情に耳を傾ける

こう並べると、特別に難しいことではないように見えるかもしれません。

けれど実際にやってみると、私たちは相手の話を聴きながら、頭の中でいろいろなことを考えています。

次に何を言おう

どう解決しよう

この考え方は違うんじゃないか。

そんなふうに、いつの間にか 「相手を理解すること」から「自分が何を返すか」に意識が移ってしまう ことがあるのです。

だからこそ、相手の表情や声、姿勢にも注意を向けながら、すぐに答えを出さずに聴いてみる。

そして「私はこういうふうに理解したけれど、合っていますか?」と確かめてみる。

それだけでも、聴き方は変わっていきます。

傾聴のデモンストレーション

聴き方を変えたら、「モヤモヤが軽くなった」

レクチャーの後、もう一度ペアになり、今度は 学んだことを意識しながら 聴いてもらいました。

講義後では、皆さんの聴く姿勢が変わったように思えました。

聴き手が相手にしっかりと体を向ける。

相手をよく観察する。

話を急かさずに待つ。

言葉だけではなく、その人の感情を受け取ろうとする。

そんな姿が見られました。

ワークの後、「話してみて、モヤモヤが少し軽くなった人?」と尋ねると、たくさんの手が上がりました。

問題が解決したわけでも、「こうすればいい」という正解を教えてもらったわけでもありません。

それでも、ただ自分の話を聴いてもらうことで、 モヤモヤが少し軽くなる。

私自身、とても印象に残った場面でした。

「承認しましょう」と言われても……

研修では、承認(相手の存在や行動を認め、言葉にして伝えること)についてもお話ししました。

部下の頑張りを認めることは大切です。

しかし、今回参加された管理職の皆さんが若手だった頃は、 今ほど職場で「承認する」といった関わりが重視されていなかった時代 でもあります。

できて当たり前

仕事なんだからやって当然。

そんな職場文化の中で、叱咤激励されたことはあっても、頑張りを認めてもらった記憶がない、という方も少なくないかもしれません。

そんな話をすると、会場から笑いが起こりました。

「部下をもっと承認しましょう」と言われても、自分があまりしてもらったことがなければ、最初は難しくて当然です。

だから私は、 人を承認する前に、まずは自分を承認すること も大切にしてほしいと思っています。

「今日もよくやった」

「自分なりに頑張っているよね」

そんなふうに自分自身にも声をかけてみる。

自分に向けるまなざしは、きっと部下に向けるまなざしにもつながっていきます。

傾聴は、研修会場だけで使うものではない

研修の最後にお伝えしたのは、 「今日、この後から使ってください」 ということでした。

研修のための研修にしてしまったら、もったいないからです。

部下との面談だけでなく、ちょっとした相談を受けたとき。

同僚と話すとき。

そして、家に帰って家族の話を聴くときにも使えます。

何かを言ってあげなくてもいい。

すぐに答えを出さなくてもいい。

まずは体と顔を相手に向けて、最後まで聴いてみる。

そして

そう感じたんだね

と受け止めてみる。

そんな小さな関わりの積み重ねが、

「ここでは話しても大丈夫」

「自分のことを分かろうとしてもらえる」

という感覚につながっていきます。

「心の安全」は、特別な制度や大きな取り組みだけでつくられるものではありません。

挨拶をする。

感謝を伝える。

頑張りを認める。

そして、話を聴く。

そんな毎日の小さなやりとりの中で、少しずつ育っていくものなのだと思います。

今回、このような機会をつくり、研修にお声がけくださった皆さま、本当にありがとうございました。

そして、ワークに積極的に参加してくださった部課長の皆さまにも、心より感謝いたします。

楽しそうに、そして真剣にお互いの話に耳を傾ける皆さんの姿が、とても印象に残っています。

今回体験した「聴く時間」が、職場での部下との対話はもちろん、身近な人との日々のやりとりにもつながっていったら嬉しいです🍀