“考え”と健康

こんにちは。

アドラー×ゲシュタルトをベースに心の学びをお伝えする

“はたらく人の自己受容と自己理解のためのサポーター” 上谷実礼です。

“考え”と健康

もうずいぶん前になりますが、私が臨床医をしていた頃、

患者さんをみていて、病気を治すことは大切だけれど、

病気を作っている生き方を変えないと根本的な解決にはならないよな、と感じていました。

 

健康のためによい生き方というと、みなさんはどんなことを思い浮かべますか?

充分な睡眠時間を取ること

適度な運動習慣を持つこと

栄養バランスの取れた食事をすること

お酒やタバコを控えること

などはきっとすぐに思い浮かぶでしょう。

 

若かりし頃の私は縁あって社会医学の分野に進み、

保健指導(生活指導)をがんばれば病気の人が減るんじゃないか、と単純に考えました。

そんなに簡単な話じゃないよね、ということにすぐに気づいて

根本的なアプローチを変えた、ということはこの本にまとめました

 

産業医としてたくさんのビジネスパーソンと関わる中で、

不適切に思われる生活習慣を選択するのは

ストレスに対するコーピング(対処行動)であって、

対処行動は自分を守ってくれているものでもあるから、

根っこのストレスをなんとかしないといけないよな、と

気づくのにもあまり時間は掛かりませんでした。

 

で、最近ではよく知られているように、ストレスの原因は自分の外側にあるのではなく、

自分の考え方や物事の受け止め方にあるよな、ということもすぐに理解できたのですが、

では、具体的に自分の考え方がどのように健康に影響を及ぼすのかということを

シンプルに医学的に説明するためのロジックが分からずモヤモヤしていました。

自律神経や内分泌系が関係しているのだろうなということぐらいは想像できたのですが、

はっきりと自信を持って説明できるぐらいに腹落ち感がなかったんですよね。

 

そんな私のモヤモヤはポリヴェーガル理論に出会ったことでスッキリと解消されました。

ポリヴェーガル理論(多重迷走神経理論)は

行動神経科学の研究者である米国のスティーブン・ポージェス博士が提唱している

自律神経についての新しいアプローチです。

迷走神経とは脳神経の一種であり(全部で12本ある脳神経のうちの10番目)、

交感神経とともに自律神経と呼ばれる副交感神経のうちの80%を占めます。

やや乱暴ですが、副交感神経≒迷走神経と理解してしまってもいいでしょう。
(実際には副交感神経には迷走神経だけでなく動眼神経、顔面神経、舌咽神経、骨盤神経も含まれます)

ポリヴェーガル理論によると、副交感神経系はさらに、

背側迷走神経複合体と腹側迷走神経複合体の2つに分かれており、

交感神経系とあわせて、自律神経系は3つのシステムから形成されていると考えます。

そして、3つの自律神経は生物の系統発生を遡ると

背側迷走神経複合体⇒交感神経⇒腹側迷走神経複合体の順に進化してきたことが分かっています。

ポリヴェーガル理論以前は、ストレスがかかったときの防衛メカニズム、

つまり危機的な状況にどのように適応するかを説明するのに交感神経系の

「闘争か逃走か(fight or flight)」のみが知られていましたが、

背側迷走神経複合体も別の防衛反応に関与していることが分かりました。

これらは「凍りつき(freezing)」の反応であり、

動物でみられる“死んだふり”、学習性無力感、ショックによる失神、

パニック、解離、抑うつ、トラウマなどが含まれます。

そして、ポリヴェーガル理論では自律神経の系統発生の新しい方から

腹側迷走神経複合体⇒交感神経⇒背側迷走神経複合体の順番でそれぞれの機能を使って

環境適応していると説明します。

ストレスがかかるような危機的状況において、

人などの高等な哺乳類は腹側迷走神経複合体を使ってコミュニケーションを取ることで対処しようとし、

硬骨魚類以降の生物は戦うか逃げるかの手段を使って対処しようとし、

軟骨魚類からは虫類までの生物は不動化、死んだふり、シャットダウンなどを使って対処します。

私たち、人も、ベースの環境が安全安心であれば

まず腹側迷走神経複合体の機能を使ってコミュニケーションを取ることで対処しようとしますが、

ストレスの度合いが大きくなるにつれて、交感神経、背側迷走神経複合体と

その機能を切り替えて危機的状況に適応しようとします。

 

背側迷走神経複合体の活性化が引き起こす凍りつき反応による解離やトラウマなどの理解が進み、

ポリヴェーガル理論はトラウマに対応するセラピストの理論的支柱になった訳なのですが、

私はベースの「安全安心」があることで腹側迷走神経複合体が活性化し、

社会的関わりを持つことで危機的状況に対処しようとする、という方に特に興味を持ちました。

ポージェスは「私たちが安全であるとき、マジカルなことが起こる」

「この安全感こそが治療なのだ」と言っていますが、

「安全安心」は自分の外側の状況だけが重要なのではなく、

自分の内側に「安全安心」を感じられることの方が大切なんじゃないかと思うんだよね。なぜなら自分とは24時間365日一緒にいるわけですからね。

自分の内側に「安全安心」があるとは、自分責めをしていないこと、自分にダメ出しをしていないこと、

自己否定をしていないこと、すなわち自己受容をしていることだと考えられます。

 

自分を責めたり、自分にダメ出しをするのは自分の“考え”です。

こういう自分はダメ。

まだまだ努力が足りない。

自分には能力がない。

好きなことをしてはいけない。

本音を言ってはいけない。

がんばらないと認めてもらえない。

全然実績も出してない私には価値がない。

あとは先日の私のように「私は病気だ」「将来、○○になるかもしれない」みたいなのも“考え”です。

 

でね、すべての“考え”は自分の外側から入ってきた、自分ではないものなんです。

だって赤ちゃんの時から「実績を出していない私には価値がない」なんて考えないですよね。

だからまあ、自分の内側に安全安心を作る、と言っても

自分が外側から取り込んだ他人の“考え”が自分を責める訳だから

結局は外側の環境が安全安心でないことと同じ意味なんだけど。
(ここ、伝わってますか?)

 

ベースの安全安心がないと、つまり自分の中に自己否定があると、

危機的状況に対処する神経が交感神経⇒背側迷走神経複合体へと切り替わりやすくなります。

背側迷走神経複合体の過活性化による凍りつきの防御機能による疾患・症候群としては

自律神経失調症、心身症、過敏性腸症候群、過換気症候群、緊張性頭痛、線維筋痛症、

慢性疲労症候群、PMS、顎関節症、自己免疫疾患、各種依存症などが考えられていますが、

このような病気の根っこには無意識レベルでの根深い自己否定が関係しているのではないかと感じます。

 

私個人の体験としても、自己探求を進め、自分とつながり、自己否定を手放し、

少しずつ自分を生きられるようになってから、長く悩んでいた顎関節症が軽快し、

忙しく活動しても疲れにくくなった気がしますし、

主宰している「自分とつながるスクール」のメンバー達も

自己受容が進んで自己否定を手放していくと肩こりや冷え性が気にならなくなったと話しています。

 

だからね、自分がどんな“考え”を持っているかは自律神経を介して健康に大きく影響するのです。

自己否定していると病気になります。

そして、自分を否定する“考え”と距離を置き、

自分を取り戻すためには自然の力が大きな助けになります。

自然の中でしっかりと自分を味わっていると、

自分にダメ出しをするような“考え”は浮かんできませんから。

 

というわけで、先日開催した第1回が大変好評でしたので、

5月29日に第2回も開催することにしましたよ。

自然の中で心を耕そう!ネイチャ−ワ−ク&セミナ−

通称「カモミール1Dayワークショップ」

詳細およびお申込みはこちらから。

私自身が体験したいと思っていた内容を盛り込んだ、とても贅沢なプログラムです。

ピンと来たらご一緒しましょうね♪

 

 

それでは今日も最後までお読みいただきまして、ありがとうございました^_^

 

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