拡大ポリヴェーガル理論と脳科学

ポリヴェーガル理論

ポリヴェーガル理論(多重迷走神経理論)は行動神経科学の研究者である米国のスティーブン・ポージェス博士が提唱している最先端のトラウマ理論です。
迷走神経とは脳神経の一種であり(全部で12本ある脳神経のうちの10番目)、交感神経とともに自律神経と呼ばれる副交感神経のうちの80%を占めます。
ポリヴェーガル理論以前に一般的には、自律神経は交感神経と副交感神経の2つからなり、交感神経系は「闘争か逃走か(fight or flight)」と呼ばれるような覚醒・緊張の方向に働き、副交感神経系は休息・弛緩の方向に働くとされていました。
そして、交感神経と副交感神経はそれぞれ反対の役割を担い、互いのバランスを取りながら心と体のホメオスタシスの維持に働くと考えられてきました。
ポリヴェーガル理論によると、副交感神経系はさらに、背側迷走神経複合体と腹側迷走神経複合体の2つに分かれており、交感神経系とあわせて、自律神経系は3つのシステムから形成されています。
そして、これまではストレスがかかったときの防衛メカニズムとしては交感神経系の「闘争か逃走か(fight or flight)」のみが知られていましたが、背側迷走神経複合体も別の防衛反応に関与していることが分かりました。
これらは「凍りつき(freezing)」の反応であり、動物でみられる“死んだふり”、学習性無力感、ショックによる失神、パニック、解離、抑うつ、トラウマなどが含まれます。
闘うことも逃げることもできないとき、人も動物も凍りつき反応で対処しようとするのです。
幼少期に、分かりやすい虐待やネグレクトなどを受けていないにも関わらず、一見、普通に働いているように見えるビジネスパーソンにも抑うつ状態や不安障害などがみられるメカニズムもポリヴェーガル理論で説明されます。
また、ポリヴェーガル理論を学ぶと、私たちが安心安全を感じながらつながって生きることの大切さが、神経学的にもよく理解できます。

拡大ポリヴェーガル理論

昨年12月に日本のポリヴェーガル理論の大家である津田真人先生を招聘して、基礎講座を開催しました。

【津田先生のご著書】

基礎講座も大変好評だったのですが、ポリヴェーガル理論をさらに深く理解するために

7月3日4日で『拡大ポリヴェーガル理論と脳科学』のセミナーを開催していただきました。

ブログでのご報告がすっかり遅くなりました…。

セミナーの前に津田先生からいただいたメッセージです。

「脳と自律神経は相互作用し一体となって働いています。

しかしポリヴェーガルは、皮質のプロセスについてはあえて触れず、ほとんどブラックボックスとしています。

反対に脳科学(社会脳研究)は、自律神経のプロセスをほとんどブラックボックスとしています。

それを統合することによって、臨床場面において身体的なアプローチと言語的なアプローチを、より有機的に結びつけられるのではないでしょうか。

そのための理論的な基礎を考えたいというのが私の問題意識です。

そのときポリヴェーガル理論がもつポテンシャルが、いっそう深く明らかになるでしょう。」

 

 

参加者は精神科医、脳神経外科医などドクターをはじめとする治療者、セラピスト、大学教授など専門家ばかりでしたが、

皆さん、津田先生の信じられないぐらい膨大な知識量に圧倒されるばかり…。

神経解剖学だけでなく、発生学、内分泌学、心理学、動物学などの広く深い知識に加えて、20年以上にも渡る臨床家としての経験も踏まえて、みっちり1日半の講義をしてくださいました。

今回、受講させていただいた『拡大ポリヴェーガル理論と脳科学』は初公開から3回目の開催とのことでしたが、

これまでは1日のプログラムだったそうです。

けれども、「受講者の方がより深くじっくり理解できるように」という津田先生のご配慮のもと、

今回のヒューマンハピネス主催セミナーから1日半のプログラムにしていただきました^_^

 

かなり難解な内容だったものの、津田先生の命への愛あふれるお話を伺うと理解が進むのです!

 

教わったことはたくさんありますが、自律神経系と中枢系のつながりが、求心路系と遠心路系とで理解できたことで、

脳と自律神経が相互に影響を与え合いながら私たちが生きているのだ!ということに深く感動しました…。

心に刺さりまくってことばかりで、たくさんメモを取りましたが、ごく一部をご紹介しておきます。

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●(カウンセリング、セラピーにおける)言葉が悪いのではない。自律神経に響かない言葉が蔓延していることが悪いのだ。
●自分とは何か、という感覚は延髄の孤束核で集められる自分の内臓感覚からきている。つまり、自己認識を作っているのは迷走神経である。
●作り笑いや親しくすることは防衛反応である。
●皮質で理性的な判断をするためには身体からの情動的な情報を必要とする。
●側頭頭頂接合部を電気刺激すると幽体離脱する。鏡像認知をする部位と同じ。
●扁桃体を救済せよ! 扁桃体は悪者ではなく、ポジティブであれネガティブであれ生体にとっての情動的な意味を真先に察知する役目を担っていて、
善にも悪にもよく反応しているだけ。悪に見えるとしたら皮質とのバランスが調和してしないから。
●マインドワンダリングは創造性を発揮するために必要な時間である。マインドフルネスはマインドワンダリングを抑えることが目的ではない。
●デフォルトモードネットワークが働いているときには自己と他者についてのモニタリングをしている。私たちはボーっとしているときにも社会的な作業をしているのだ。
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ここに書いたことはごく一部で、教わったことはもっともっとありますが、私の理解が追いついていません>_<
今は臨床医の仕事はしていませんが、ポリヴェーガル理論を学ぶことで企業研修で自己受容についてお伝えしたり、
セラピー、カウンセリングを通して自己探求のお手伝いをすることは健康にも効く!ということに自信が持てます。
社会に働きかける一次予防は医師の大切なお仕事なので、これからも学びを続けて、自分の持ち場で力を尽くします!!

 

 

 

 

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